【ISO9001】9.2 内部監査(1)

品質マネジメントシステムの適合性と有効性を自分たちでチェックしよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「品質マネジメントシステムの適合性と有効性を評価するために、内部監査を実施しなさい」ということです。

「内部監査」とは何か

この項目は、組織が内部監査をすることを要求しています。それでは、「内部監査」とは何でそうか。それを理解するためには、まず「監査」とは何かを理解する必要があります。

「監査」とは、規格では以下のように定義されています。

「監査基準が満たされている程度を判定するために、監査証拠を収集し、それを客観的に評価するための体系的で、独立し、文書化されたプロセス」(ISO9000:2015, 3.13.1)

これを簡単に言い換えると、「基準がどの程度満たされているかを、客観的証拠に基づいて評価するプロセス」ということになります。それを図で表すと以下のようになるでしょう。

イラスト

「監査」とは何か?

そして、監査には大きく分けて「内部監査」と「外部監査」があり、「外部監査」は更に顧客又はその代理人によって行われる「第二者監査」と、ISOマネジメントシステム認証機関のような外部の独立した機関によって行われる「第三者監査」があります。これらに対して、内部監査を「第一者監査」と呼ぶこともあります。

イラスト

「監査」の種類

何のために内部監査をするのか

それでは、内部監査は何のために行うのでしょうか。9.2.1では、内部監査の目的を、以下のことを評価・判定することであると規定されています。

  • 品質マネジメントシステムが、組織が規定した要求事項に適合しているか。
  • 品質マネジメントシステムがこの規格の要求事項に適合しているか。
  • 品質マネジメントシステムが有効に実施され、維持されているか。

言い換えると、前二者は品質マネジメントシステムの「適合性」、後者は品質マネジメントシステムの「有効性」を評価することを意味しています。「適合性」とは「要求事項を満たしているか」、つまり「必要なことが実施されているか」であるのに対して、「有効性」とは「計画した結果が達成されているか」を意味します。従って、内部監査では、「決められたことが実施されているか」という「適合性」だけでなく、「実施されている結果が望ましいものとなっているか」という「有効性」も見なければならなりません。

「内部監査プログラム」とは何か

9.2.1では、内部監査を「計画された間隔(planned intervals)」で実施することが要求されています。これは、「毎年2回、4月と10月に実施する」とか、「毎年1回、10月に実施する」と画一的に実施時期を決めることを意図したものではなく、次の9.2.2で要求しているように、関係するプロセスの重要性、組織に影響を及ぼす変化、及び以前の監査結果を考慮して監査プログラムを計画することを意図しています。

つまり、例えば、組織の製品・サービスの適合に対して大きな影響を持つプロセス(例 製造業における製造プロセス、多くの重要な外注先を使用している組織における外注先管理プロセス等)や、変更が行われた、又は計画されているプロセス等の監査の頻度を高くしたり、より重要性の低いプロセスや変化のないプロセス、以前の監査で問題がほとんど見られないプロセス等についてはより低い頻度にしたりして、リスクに応じて柔軟に計画を立てて内部監査を実施する、ということです。外部審査でよく指摘される事項の一つの項目が、この監査プログラムの作成に当たって必要な事項が考慮されていない、というものがありますので、以上のことを十分理解した上で監査プログラムを作成することを忘れないようにすることが必要です。

<参考:監査プログラム立案の際に考慮すべき事項の例>

  • 重要性
    • 組織の製品・サービスの適合性や顧客満足の向上に対して特に重要な意味を持つプロセスはどれか?
    • 社内での不具合や顧客からのクレームが多く発生しているプロセスはないか?
  • 変化
    • 新規事業や新規製品・サービスに関わるプロセスはないか?
    • 組織や要員、設備等の大きな変更があった(又は計画されている)プロセスはないか?
    • 大きな変化があった(又は想定される)外部の要因(顧客要求、法規制、競争環境等)に影響を受けるプロセスはないか?
  • 以前の監査結果
    • 内部監査や外部監査(顧客監査、審査機関による監査)で多くの問題が指摘されているプロセスはないか?
  • その他
    • 経営トップからの特別な指示はないか?

(次回に続く)

 

書籍:「ISO9001:2015 完全理解」

2000年以来の大改定と言われるISO9001:2015。
今回の大改定の背景には、めまぐるしく変化する社会情勢があります。
本書では各要求事項をその意図を含めて解説することで、用語にとらわれない、要求事項が組織に求める「本質」を明らかにしていきます。
単なる逐条解説に終わらない、ISO9001:2015を芯から理解できる1冊です。