【ISO45001】8.1.2 危険源の除去及び労働安全衛生リスクの低減
優先順位に基づいて管理策を決めよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「危険源の除去や労働安全衛生リスクの低減のための管理策を、優先順位に基づいて決定しなさい」ということです。
管理策を決める際の優先順位
6.1.2.1で危険源が特定され、6.1.2.2で労働安全衛生リスクが特定されましたが、この項目は、これらの危険源やリスクを除去したり低減したりするための管理策を策定するに当たって考慮すべき優先順位について規定しています。組織はリスクを低減するための管理策を策定する際、ここに規定されたa)~e)の順番で検討を行う必要があります。つまり、できるだけリスクを除去する方法を考え、それが難しければ代替する方法を…というような順番で考えていくことで、より確実に危険源の除去やリスクの低減につながるような管理策を決めることが要求されています。
附属書A.8.1.2では、これらの優先順位ごとの管理策の例が以下のように挙げられていますので、参考にすると良いでしょう。
a) 除去
- 危険源を取り除く
- 危険な化学薬品の使用をやめる
- 新しい職場を計画する際に人間工学的アプローチを適用する
- 単調な作業又はネガティブなストレスを引き起こす作業を除去する
- フォークリフトをエリアから取り除く
b) 代替
- 危険なものを危険性の低いものに取り換える
- オンラインガイダンスを使った消費者からの苦情への応答に変更する
- 労働安全衛生リスクを根源で対処する
- 技術の進歩に順応する(例 溶剤塗料を水性塗料に切り替える、滑りやすい床材を変更する、設備のための電圧要件を下げる)
c) 工学的な対策、作業構成の見直し
- 人々を危険源から分離する
- 全体的な保護処置を実施する(例 分離、機械のガード、換気システム)
- 機械化する
- 騒音を低減する
- 手すりの設置によって高所からの落下を防止する
- 人々が一人で労働すること、不健康な労働時間及び作業量を避けるため、又は虐待を防ぐために作業構成を見直す
d) 教育訓練を含む管理的な対策
- 定期的な安全装置検査を実施する
- いじめ及びハラスメントを防ぐために教育訓練を実施する
- 下請負者の活動との安全衛生に関する調整を行う
- 新人教育訓練を行う
- フォークリフト運転免許を管理する
- インシデント、不適合及び虐待を報告する方法に関する指示を提供する
- 働く人の労働形態を変更する(例 シフト)
- リスクにさらされていると特定された働く人のための健康・衛生管理を行う(例 聴覚、手又は腕のふるえ、呼吸器疾患、皮膚疾患又は暴露)
- 働く人に適切な指示を与える(例 入場管理プロセス)
e) 個人用保護具(PPE)
- 衣服を含めた、適切なPPE、並びにPPEの使用及び保守に関する指示を与える(例 安全靴、保護メガネ、防音保護具、手袋)
個人用保護具(PPE)の無料支給
規格開発時には、働く人に個人用保護具(PPE)を無料で提供し、労働時間内に無料の教育訓練を実施することに関する要求事項を規格に含めるべきとの要望がありましたが、「働く人」の定義に「請負者」への言及が含まれていることから、この要望は受理されませんでした。この議論を受けて、「多くの国で、法的要求事項及びその他の要求事項は、個人用保護具(PPE)が働く人に無償支給されるという要求事項を含んでいる」という注記が追加されました。