【ISO45001】8.1.1 運用の計画及び管理(一般)

労働安全衛生マネジメントシステムの運用のプロセスを計画し、管理しよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「労働安全衛生マネジメントシステムに必要な運用のプロセスを適切に計画し、管理しなさい」ということです。ここでは運用プロセスの管理に関する一般的な事項が要求され、続く8.1.2~8.1.4で以下のようなことが規定されています。

  • 1.2:危険源除去・リスク低減のための管理策をどのように決定すべきか
  • 1.3:変更をどのように管理すべきか
  • 1.4:調達をどのように管理すべきか

「運用プロセス」とは

「運用プロセス」とは、「労働安全衛生マネジメントシステム要求事項を満たすために必要なプロセス、及び箇条6で決定した取組みを実施するために必要なプロセス」のことです。具体的には以下のようなものが典型的な例として挙げられるでしょう。

  • 製造やサービス提供作業における安全衛生管理
  • 事務所作業における安全衛生管理
  • 従業員の健康管理
  • 調達管理
  • 外部委託先管理

どのように管理したらよいか

これらのプロセスに対してどのような管理を行うかは、組織の運用の性質、リスク及び機会、法的要求事項等によって異なります。付属書A.8.1.1では、運用管理の方法の例として以下のような事項が挙げられています。

  • 業務の手順や体系の導入
  • 働く人の力量の確保
  • 予防的・予測的保守や検査プログラムの確立
  • 物品・サービスの調達に関する仕様書
  • 法的及びその他の要求事項や設備製造業者の指示の適用
  • 工学的・管理的な対策
  • 以下のような事項を通じた、働く人に合わせた作業の調整
    • 作業編成方法の決定や再決定
    • 新人の研修
    • プロセス・作業環境の決定や再決定
    • 職場、設備などを新しく設計・変更する際の人間工学的アプローチの使用

なお、5.4で要求されているように、プロセスの管理方法や、それらの効果的な実施と活用を決定する際には、非管理者が参加しなければならないことにも注意する必要があります。

包括的なプロセス要求

ここでは、前述した4.4とともに「包括的なプロセス要求」がされている点にも注意が必要です。つまり、4.4では労働安全衛生マネジメントシステム全体に対して、そこで必要なプロセスを確立することが包括的に要求されていたのに対して、ここではその中でも特に運用に関して必要なプロセスを確立することが包括的に要求されています。他の項目では必ずしも都度「プロセス」が要求されている訳ではなく、直接的に「〜しなければならない」と実施事項が規定されていることが多いですが、だからといってプロセスを構築しなくても良いという訳ではありません。この規格はあくまで「システム」の規格であり、そこには必要な程度プロセスや仕組みを構築し、それによって継続的に必要な事項が実施されるようにしなければならないことは当然です(ただし、それらの「プロセス」を文書化する必要があるかどうか、文書化するとしてもどの程度するのか等は組織の状況によって異なります)。

複数の事業者が混在する職場での調整

ISO45001では新たに「複数の事業者が混在する職場」に関する要求事項が追加されています。これは、例えば複数の業者が作業する建設現場などが典型的な例として挙げられます。そのような職場では、他の事業者の作業による安全衛生上の影響を考慮し、お互いにコミュニケーションを取りながら、作業時間をずらしたり、作業内容を調整したりする(例 上下作業を行わない等)ことが必要になる場合があるでしょう。