【ISO14001】9.1.2 順守評価

義務的な事項が守られているかをチェックしよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「環境に関する法規制などの義務的な事項が守られているかどうかを評価しなさい」ということです。前項で監視、測定、分析、評価に関する一般的な要求がされていましたが、その中でも特に法規制などに対する順守は重要であるため、独立した項目としてその評価が要求されています。

順守評価のプロセスを構築する

義務的な事項(法的要求事項・その他の要求事項)を満たすことは、トップマネジメントが環境方針の中でコミットしなければならないことの一つに含まれていることからも分かるように、環境マネジメントシステムにおいて、最も基本的で、かつ重要な要素の一つと言えます。この項目では、6.1.3で明確にされた「順守義務」に対して、それを満たしているかどうかを評価するプロセスを構築することが求められています。6.1.3でも述べたように、この義務的な事項には「法的要求事項」だけでなく、「組織が自主的に順守を選択した要求事項」も含まれることに注意する必要があります。

 

順守評価に関して特に実施しなければならないこととして、以下のことが要求されています。

  1. 順守評価の頻度と方法を決める。
  2. 順守評価し、必要な場合、処置をとる。
  3. 順守状況に関する知識・理解を維持する。

 

順守評価のプロセスで何をすべきか?

a)では順守評価の頻度や方法を決定することが求められています。どのような頻度で評価するかは組織が判断することですが、その際には該当する要求事項の重要性、運用条件の変動、法的要求事項等の変化、組織の過去のパフォーマンス等を考慮し、適切な頻度・タイミングになるようにすべきでしょう(ISO45001:2018, 附属書A.9.1.2)。単に「全てを年1回評価する」と決めている組織は、本当にそれが適切な頻度であるかを、今一度検討すべきでしょう。

 

b)では順守評価の結果、法的要求事項を満たしていないことが分かった場合、順守義務を満たすために必要な処置を決定し、実施することが要求されていますが、これは当然のことでしょう。この場合、規制当局とやり取りし、法的要求事項を満たすための一連の処置について合意することが必要な場合もあるでしょう。

 

c)の「順守状況に関する知識・理解の維持」にも注意が必要です。これはつまり、「どのような状態であれば順守しているといえるかについて、適切な知識と理解が維持されているか」ということです。実際の審査の場面では、順守評価の結果が単なるチェックマークや〇印になっており、それに対して、何がどのような状態であったのか、それがどのような状態であれば不順守と言えるのか、ということについて聞くと、順守評価者がそれを適切に理解していないケースがあります。このような状態では「順守状況に関する知識・理解」が維持されているとは言えないでしょう。また、特に順守義務の内容が変更された場合には、それを適切に更新し、順守評価者がそれを確実に理解しているようにすることが必要です。これは要員の力量にも関わる部分であり、従ってこれは「要員に力量を持たせる仕組み」の中で対応される事項かもしれません(7.2の「力量」参照)。

 

法的要求事項を満たしていないと不適合か?

法的要求事項を満たすことが重要なことは言うまでもありませんが、法的要求事項を満たしていないことは即座に不適合となるのでしょうか。もちろん法的要求事項を満たすことは非常に重要なことは言うまでもありませんが、ISO14001に限らず、ISOのマネジメントシステム規格はいかなる場合であっても自発的に使用されるべきものであり、これらの規格に対する認証審査は法的要求事項の順守の監査ではない、という考えがあります(これは労働安全衛生マネジメントシステム規格のISO45001:2018の規格開発段階でも議論になりましたが、最終的にこのような考えが確認されました)。この考えからすると、ISOマネジメントシステムの監査では、法的要求事項を満たしていない、という「事実自体」というよりも(もちろん満たされていない法的要求事項の重要性にもよりますが)、その状態を生み出すことを許してしまう「システム」に焦点が当てられる、ということが言えるでしょう。

 

従って、法的要求事項を満たしていない場合であっても、例えばそれが環境マネジメントシステムのプロセスによって問題として特定され、修正された(されようとしている)場合は、法的要求事項を遵守するためのプロセスが機能していると考えられるため、必ずしも不適合にはなりません。逆に、法的要求事項の不順守に結果として至っていない場合であっても、法的要求事項を順守するためのプロセスに不備があるという場合は、不適合として指摘されることがあり得ることに注意しなければなりません。