【ISO14001】9.1.1 (監視、測定、分析及び評価)一般(1)

環境マネジメントシステムがうまく機能しているかを評価しよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「環境マネジメントシステムの結果を監視・測定・分析し、有効に機能しているかを評価しなさいということです。この項目は、監視、測定、分析、評価に関する一般的・概説的な要求をしている項目です。

「監視」「測定」とは何か?

この項目では、監視・測定の対象・方法と時期、分析・評価の方法と時期を明確にすることで、監視、測定、分析、評価の仕組みを構築し、運用することが求められています。

 

それでは、ここで言われている「監視」「測定」「分析」「評価」とはどのようなことを意味するのでしょうか。「監視」と「測定」については規格で以下のように定義されています。

  • 「監視(monitoring)」:「システム、プロセス又は活動の状況を明確にすること」(4.8)
  • 「測定(measurement)」:「値を確定するプロセス」(4.9)

 

言い換えると、「監視」とは「見る」こと、「測定」とは「測る」こと、ということになります。そして、状況を「見る」(監視する)ための一つの方法として、何らかの値を「測る」(測定する)ことがある、という意味で、「監視」と「測定」はワンセットで捉えることができます。

 

例えば、産業廃棄物の適正廃棄の状況を見るために廃棄物置場の分別状況や掲示板の状況を定期的に確認する、ということもあるでしょうし、マニフェスト伝票の維持状況を確認する、産廃処理業者との契約や許可状況を確認する、ということもあるでしょう。これらは何らかの値を測っているわけではありませんので、「測定」ではありません。

 

一方で、廃棄物の排出量低減のパフォーマンス状況を見るためには、当然ながら排出量を「測る」ことが必要になりますので、これは「測定」ということになります。

 

このように、何かのパフォーマンスの状況を見るためには、「測定」しないといけない場合もあれば、それ以外の方法で「監視」する場合もありますが、いずれにしてもこれらは「パフォーマンスの状況を確認する」という同じ目的のためになされる活動、ということになるでしょう。

 

「分析」「評価」とは何か?

「分析」と「評価」は規格には定義がないので、辞書を見ると、以下のような定義がされています(”Oxford Advanced Learner’s Dictionary”)。

  • 「分析(analyze)」:「あることを理解又は説明するために、特に部分に分けることによって、その性質や構造を調べること」
  • 「評価(evaluate)」:「注意深く考えた上で、あることの量、価値、質などに関する意見を形成すること」

 

これを見ると、簡単にいうと、分析とは「調べること」であり、評価とは「意見を形成すること」ということができます。従って、この項目では、監視・測定によって得られた結果を「調べ(分析)」、それによって環境パフォーマンスや環境マネジメントシステムの有効性について、それらがどのような状況にあるのかについて「意見を形成する(評価)」ことが求められていると言えます。言い換えれば、いくら分析されていても、何も意見が形成されていないのであれば、それは評価されていないのと同じであり、そのような「分析のための分析」にならないようにすることが重要です。

 

例えば、「監視・測定」で出てきたいくつかの結果が相互にどのような関係性を持っているのか、どのような傾向やパターンを持っているのか、ということをグラフにしたり表にしたりして「調べる」ことが、ここで言う「分析」に該当するでしょう。そして、その「分析」の結果から、パフォーマンスの状況が良くなっているのか、悪くなっているのか、この先何らかの手段を講じる必要があるのかないのか、といった「意見を形成する」ことが「評価」ということになります。

「監視、測定、分析、評価」の関係

(次回に続く)

書籍:「ISO14001:2015 完全理解」

今回初めての大改定となったISO14001:2015。
その背景には、めまぐるしく変化する社会情勢や、
その影響が無視できないほど大きくなりつつある地球環境の変化があります。
本書では各要求事項をその意図を含めて解説することで、
用語にとらわれない、要求事項が組織に求める「本質」を明らかにしていきます。