【ISO14001】8.2 緊急事態への準備及び対応(1)

緊急事態に備え、対応しよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「環境に関する緊急事態に対する準備をし、それが発生したら適切に対応できるようにしなさいということです。緊急事態への対応が適切に行われないことで、環境上の被害が拡大してしまうことが多々ありますので、想定される緊急事態に対して予防的な準備を行うとともに、発生した際にはその有害な影響が拡大しないように適切に対応できるようにすることが非常に重要です。

「緊急事態」とは?

この項目では、6.1.1や6.1.2で特定された緊急事態に対する準備と対応が要求されています。「緊急事態(emergency)」は規格では定義されていませんが、附属書に以下のような説明があります。

「顕在した又は潜在的な結果を防止又は緩和するために特定の力量、資源又はプロセスの緊急の適用を必要とする、計画していない又は予期しない事象」(ISO14001:2015, 附属書A.6.1.1)

 

このような想定される緊急事態に対して、そもそもそれが発生しないように予防したり、それが発生してしまったときにそれによる有害な影響を最小限に食い止めたりするためのプロセスをあらかじめ計画することが重要です。

緊急事態の準備・対応のプロセス

それでは、特定された緊急事態に準備・対応するプロセスにはどのようなことが含まれるのでしょうか。この項目では以下のようなことが挙げられています。

  1. 緊急事態からの有害な環境影響を防止・緩和するための処置を計画することで、対応を準備する
  2. 顕在した緊急事態に対応する
  3. 緊急事態とその潜在的な環境影響の大きさに応じて、緊急事態による結果を防止・緩和するための処置をとる
  4. 実行可能な場合、計画した対応処置を定期的にテストする
  5. 定期的に、また特に緊急事態発生後やテスト後に、プロセスと計画した対応処置をレビューし、改訂する
  6. 必要に応じて、緊急事態への準備・対応についての関連する情報と教育訓練を、組織の管理下で働く人を含む関連する利害関係者に提供する

緊急事態への準備・対応の流れ

ISO14001:2015の付属書A.8.2では、このような緊急事態への準備及び対応のプロセスを計画するときに組織が考慮すべき事項として以下のようなものを挙げています。

  • 緊急事態に対処する最適な方法
  • 内部及び外部コミュニケーションプロセス
  • 環境影響を防止又は緩和するのに必要な処置
  • 様々な種類の緊急事態に対して取るべき緩和及び対応処置
  • 是正処置を決定し実施するための緊急事態後の評価の必要性
  • 計画した緊急事態対応処置の定期的なテストの実施
  • 緊急事態に対応する要員の教育訓練
  • 連絡の詳細(例えば、消防署、流出物の清掃サービス)を含めた、主要な要員及び支援機関のリスト
  • 避難ルート及び集合場所
  • 近隣組織からの相互支援の可能性

 

(次回に続く)

書籍:「ISO14001:2015 完全理解」

今回初めての大改定となったISO14001:2015。
その背景には、めまぐるしく変化する社会情勢や、
その影響が無視できないほど大きくなりつつある地球環境の変化があります。
本書では各要求事項をその意図を含めて解説することで、
用語にとらわれない、要求事項が組織に求める「本質」を明らかにしていきます。