【言葉のチカラ】空

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中が大きな困難に直面しています。

しかし人類は今までも数々の苦難に遭遇しながら、そのたびにそれらを乗り越え、力強く立ち上がってきました。

「言葉」によって目に見えないものの存在や価値を認識することができる唯一の生き物である私たち人間は、そのような苦境に直面した時、たった一つの「言葉」との出会いによってその苦境を乗り越える勇気や希望を与えられることがあります。

言葉がもつそのような「チカラ」を信じ、ここでご紹介する言葉が、誰かにとってのそのような出会いの言葉となることを祈って。

日の輝きと暴風雨とは、同じ空の違った表情にすぎない。(ヘルマン・ヘッセ)

ヘルマン・ヘッセは『車輪の下』『デミアン』『シッダールタ』といった作品で知られるドイツの作家です。平和主義を唱えていた彼の作品は、当時のナチス政権から「時代に好ましくない」というレッテルを貼られてドイツ国内で紙の割り当てを禁止されるなどの苦難に遭いますが、戦後の1946年に『ガラス玉演戯』などの作品が評価されてノーベル文学賞を受賞し、20世紀前半のドイツを代表する作家となりました。

 

飛行機で雲の上高く空を飛んでいると、飛び立つときは大荒れの天気であっても、それは雲の下だけであって、その上の空は晴天のときと変わらない空であることに気づかされます。そう考えると、穏やかに晴れた日の空と、暴風雨の日の空とは、一見まったく異なる空のように見えますが、それは地上にいる私たちの視点からの一つの見え方に過ぎない、ということに納得がいきます。

 

平穏で順風満帆の中にあっては自分を取り巻く世界も輝いて見えるでしょうし、大きな挫折や試練の渦中にあっては暗闇に見えることもあるでしょうが、それはより大きな視点から見れば同じ世界の異なる表情でしかない。そしてその表情は決して止まることなく、常に変化していることを考えると、順調なときにあっては逆境に陥ったときの備えを怠らず、そして逆境のときにはそれも必ず終わりが来ることに希望をもつことが重要なのでしょう。

 

ヘルマン・ヘッセ(1877~1962)

ドイツ生まれのスイスの作家。ノーベル文学賞受賞者。