【ISO9001】10 改善(2)

品質マネジメントシステムを常に改善しよう

(前回の続き)

不適合に対してどのように対応すべきか

10.2では、不適合が発生した場合にどのような対応をすべきかが規定されています。10.1で「改善」にはより抜本的な改善が含まれ得ることが言及されていますが、それらはあくまで「推奨」です。一方で組織が実施することを「要求」されているのは、ここでいう不適合が発生した場合に対する対応(「修正」や「是正処置」)です。

 

10.2.1は大きく分けて、a)の「不適合への対処」を要求した部分と、b)以降の「是正処置」について要求した部分に分けられます。

 

前段の(a)では、「不適合への対処」が要求されています。すでに見た8.7において「アウトプット(製品・サービス)」の不適合に対する対応が要求されていましたが、ここで言う「不適合への対処」とは、製品・サービス以外の不適合(手順やプロセス、システム等に関する不適合)も対象としており、それらに対して適切に対処することが要求されています。

是正処置をどのようなプロセスで進めるか

b)以降では、製品・サービスの不適合を含めて、発生した不適合に対して必要な再発防止のための処置(是正処置)をとることが要求されています。「是正処置」はISO9000:2015では以下のように定義されています。

「不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置」(3.12.2)

 

是正処置を進めるプロセスには、以下の要素が含まれます。

  • 以下を通じて是正処置の必要性を評価する
    • 不適合をレビュー・分析する(何が起こったのか?)
    • 不適合の原因を明確にする(なぜ起こったのか?)
    • 類似の不適合の有無・発生の可能性を明確にする(他に同じようなことはないか? 同じようなことが発生する可能性はないか?)
  • 必要な是正処置を実施する
  • 是正処置の有効性をレビューする
  • 必要な場合、計画段階で明確にしたリスク・機会を更新する
  • 必要な場合、品質マネジメントシステムを変更する

 

原因分析と水平展開

有効な是正処置をとる上で特に重要なことは、不適合の原因を適切に特定することです。ISO9000:2015にある「是正処置」の定義の注記に「不適合には複数の原因があり得る」と記載されているように、不適合の原因を検討する際には、一つの原因に安易に飛びつくのではなく、問題を多面的に考え、複数の原因を特定することが重要です。

 

またこの不適合の原因分析と合わせて、問題にしている不適合を狭く捉えるのではなく、「類似の不適合」の発生の可能性を検討することが要求されています。これはいわゆる「水平展開」として知られていることですが、発生した不適合からより多くの教訓を得て、できるだけは幅広く改善を行う上で重要な考え方と言えるでしょう。

 

是正処置の必要性の評価

不適合の原因が特定され、類似の不適合の発生の可能性が評価されたら、それらの情報をもとに再発防止のために何らかの処置が必要かどうかを評価します。これは、すべての不適合に対して是正処置をしなければならないというわけではないことを意味しています。10.2.1の末尾に「是正処置は、検出した不適合の持つ影響に適切なものでなければならない」と規定されているように、是正処置とはあくまでその不適合の再発に関連するリスクとの関係で考えるべきものです。そのリスクと、それに対してとる処置のコストのバランスを考慮し、場合によってはそのリスクを受け入れる、という判断もあり得ます。

 

是正処置の実施

このような検討の結果、組織がその不適合に対する是正処置をとる必要があると決定したら、それを実施しなければなりません。ここで注意しなければならないのは、「修正」と「是正処置」との違いです。「修正」とは、発生した不適合それ自体に対処する(直す、廃棄する等)ことであり、いわゆる応急処置(暫定処置)であるのに対して、「是正処置」は、発生した不適合が再発しないためにその原因を取り除く、いわゆる恒久対策です。従って、修正のみで是正処置が適切に実施されなければ、問題が繰り返し発生することを効果的に防ぐことができず、常に「もぐら叩き」をしている状態になってしまいます。そうならないために、適切に「原因を除去する」処置が実施されることが非常に重要であり、そのためにも問題発生の「真の原因」を掘り下げることが重要になります。

 

是正処置の有効性のレビュー

是正処置は、取りっぱなしではなく、その有効性をレビューしなければなりません。「有効性」とは、ISO9000:2015で以下のように定義されています。

「計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度」(3.7.11)

 

従って、「是正処置の有効性をレビューする」とは、是正処置が計画した通りに実行され、それにより計画した結果が達成されているか、を見ることです。是正処置の結果、当初計画した結果が達成されたか、ということは時間が経たないと評価できない場合が多いので、この有効性のレビューが忘れられないように、いつ、誰が、どのようにこの有効性の評価を実施するかを明確にすることが重要です。

 

さらに、「必要な場合には、計画で明確にされたリスク及び機会を更新」することが求められています。これは、是正処置をとった結果、当初想定していた「リスク・機会」が変化することがあり得ることを意味しています。是正処置をとった結果、通常その不適合に関する(悪い意味での)リスクが低減されるでしょうが、それだけでなく、別の領域に対して思わぬ悪い影響が起こりうる(リスクが高まる)こともあることに注意が必要でしょう(例 是正処置によってチェックが強化され、その結果効率性が低下し、製品が滞留する可能性が高まる)。

是正処置の流れ

(以前の規格で求められていた「予防処置」については、以下の関連記事をご覧ください↓)

【ISO質問箱】(共通)「予防処置」はしなくていいの?

 

継続的改善とは?

最後の10.3では継続的改善を行うことが要求されています。「継続的改善」とは、以下のように定義されています。

「パフォーマンスを向上するために繰り返し行われる活動」(ISO9000:2015, 3.3.2)

 

「繰り返し行われる」活動であるためには、単発的な活動であってはなりません。ISO9001:2015で要求されている活動は全て継続的に行われる活動ですので、ここでは今まで要求されてきた品質マネジメントシステムの活動全体を通じて常に改善の必要性や機会を特定し、改善し続けることを要求している、と理解すれば良いでしょう。

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