【ISO9001】10 改善(1)

品質マネジメントシステムを常に改善しよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「常に改善の機会を特定し、品質マネジメントシステムを改善し続けなさい」ということです。そして、この項目は10.1~10.3の三部構成になっており、それぞれ以下のようなことが規定されています。

  • 10.1:「改善」全般に関する一般的な要求
  • 10.2:不適合が発生した場合の対応に関する要求(修正、是正処置)
  • 10.3:継続的改善に関する要求

「改善」とは何か

10.1は、改善に対する概説的な要求事項です。「改善」とは、規格では以下のように定義されています。

「パフォーマンスを向上するための活動」(ISO9000:2015, 3.3.1)

 

ここでは、改善の対象として以下のようなものが挙げられています。

  1. 製品・サービスの改善
  2. 望ましくない影響の修正・防止・低減
  3. 品質マネジメントシステムのパフォーマンス・有効性の改善

 

特にa)では「将来のニーズ・期待に取り組む」ための製品・サービスの改善にも言及されているところに、ISO9001:2015が品質マネジメントシステムと組織の戦略的方向性の整合を重視していることが表れていると言えるでしょう。また、b)は言い換えると(マイナスの)リスクを低減することであり、ここからもリスクに基づく思考というISO9001:2015を貫く考え方が表れていると言うことができます。

「改善」の種類

それでは、「改善」には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。注記において、「改善」に含まれるものが以下のように例示されています。

  • 修正
  • 是正処置
  • 継続的改善
  • 現状を打破する変更
  • 革新
  • 組織再編

 

このうち、最初の3つについては以下のような定義がISO9000:2015で与えられています。

  • 「修正」:「検出された不適合を除去するための処置」(3.12.3)
  • 「是正処置」:「不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置」(3.12.2)
  • 「継続的改善」:「パフォーマンスを向上するために繰り返し行われる活動」(3.3.2)

 

またこれら3つは別の項目でも具体的に要求されており(「修正」は8.7及び10.2、「是正処置」は10.2、「継続的改善」は10.3)、その意味で、これらはISO9001:2015で最低限実施することを要求された改善と言えます。

 

一方、後の3つ(「現状を打破する変更」「革新」「組織再編」)はISO9001:2015の他の項目では一切言及されていません。つまり、これらも「改善」の中に含むことができますが、必ずしも規格で「要求」されているというわけではありません(「革新(イノベーション)」をしていないから不適合、ということになってしまっては、多くの組織が不適合、ということになってしまうでしょう)。

 

ここで言いたいのは、単に発生した問題に対する修正や是正処置、スモールステップの継続的改善だけが「改善」なのではなく、「現状を打破する変更」「革新」「組織再編」といったより抜本的な改善も含むことができる、ということを示すことで、品質マネジメントシステムをより積極的な改善のためのツールとして活用してほしい、という意図があると考えられます。審査の際に、小集団活動や改善提案制度といった積極的な改善活動が行われているのに、(余計な指摘を受けたくない、という思いから)それらはISO9001の品質マネジメントシステムの範囲外であることを主張する組織がありますが、本来ISO9001はそのような積極的な改善活動を促進するものではあっても阻害するものであってはなりません。これは審査をする側が肝に銘じておくべきこととも言えるでしょう。

 

(次回に続く)

書籍:「ISO9001:2015 完全理解」

2000年以来の大改定と言われるISO9001:2015。
今回の大改定の背景には、めまぐるしく変化する社会情勢があります。
本書では各要求事項をその意図を含めて解説することで、用語にとらわれない、要求事項が組織に求める「本質」を明らかにしていきます。
単なる逐条解説に終わらない、ISO9001:2015を芯から理解できる1冊です。