【ISO14001】7.4 コミュニケーション(1)

必要な人に、必要なことが伝達されるようにしよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「環境マネジメントシステムが効果的に運用されるようにするために、内部及び外部の必要な人に、必要な事項が適切なタイミングで伝達されるようにしなさい」ということです。そして、この項目は7.4.1~7.4.3の三部構成になっており、それぞれ以下のようなことが規定されています。

  • 7.4.1:コミュニケーションのプロセスに関する一般的な要求事項
  • 7.4.2:内部コミュニケーションに関する要求事項
  • 7.4.3:外部コミュニケーションに関する要求事項

 

コミュニケーションの「プロセス」

組織の不祥事が依然として後を絶ちませんが、その中にはコミュニケーションの悪さに起因しているものも多く見受けられます。また、不祥事にまでは至らなくても、コミュニケーションがうまく機能しないことで同じ問題が繰り返されることもあります。組織の環境マネジメントシステムが有効に機能するためには、コミュニケーションがトップダウンだけでなく、ボトムアップや部門の垣根を越えた水平方向においても十分に行われるようにすることが非常に必要です。

 

個々の人が適切な行動をとるためには、タイムリーで正確な情報を把握することが必要不可欠です。そして、誰がどのような情報を必要とするかは、その人の役割や責任、立場によって異なるでしょう。従って、適切な人に、適切な情報が、適切なときに伝達されるようにするためには、計画性のない、「行き当たりばったり」のコミュニケーションではうまくいかない可能性が高くなってしまいます。これは、組織の規模や複雑さによっても大きく左右されますので、それぞれの組織の状況に合ったコミュニケーションの「プロセス」や「仕組み」を明確にすることが重要です。一般的に言えば、規模の大きな組織や、複雑な組織(例 物理的な場所が広範囲に存在する、組織の構成が多くの階層や部門に分かれている等)の場合は、そうでない組織に比べてより綿密に計画されたコミュニケーションのプロセスが必要になるでしょう。

 

この「コミュニケーションのプロセス」には、「内部」と「外部」の両方のコミュニケーションが含まれ、そこでは以下のようなことを明確にする必要があります。

  1. 「何について」コミュニケーションするか(内容)
  2. 「いつ」コミュニケーションするか(実施時期)
  3. 「誰と」コミュニケーションするか(対象者)
  4. 「どのように」コミュニケーションするか(方法)

内部・外部コミュニケーションの「プロセス」

コミュニケーションの「プロセス」を確立する際に考慮すべきこと

コミュニケーションのプロセスを確立する際には、関係する外部の利害関係者の見解を考慮しなければなりません。「関係する外部の利害関係者」は、4.2への対応の中で明確にされているはずですので、それらと関連してコミュニケーションのプロセスを確立するに当たって考慮すべき事項があるかどうかを検討する必要があります。例えば、顧客や親会社、行政機関、業界団体、地域住民といった利害関係者が環境に関する情報開示や報告を求めていたり、問合せが発生することが考えられたりする場合、どのような報告や回答の必要性があるのか、誰がどのように判断し、対応するのか、といったことに関して適切な責任・権限を割り当てておくことも必要でしょう。

 

コミュニケーションのプロセスを確立する際には、順守義務も考慮に入れなければなりません。これは7.4.3にも規定されているように、特に外部コミュニケーションにおいて注意が必要です。法規制上要求されている各種届出や報告、顧客から要求される環境負荷物質に関する調査依頼への回答や環境マネジメントシステム運用状況の報告などが例として考えられるでしょう。

 

更に、コミュニケーションされる情報の信頼性を確保しなければならない、という要求事項にも注意が必要です。これは以前のISO14001:2004には全くなかった新しい要求事項です。内部でコミュニケーションされる情報が正確なものでなければ(発生したインシデントの情報が正しく伝達されない等)、環境パフォーマンスを向上させるための活動の有効性に大きな疑問が生じるでしょうし、外部にコミュニケーションされる情報が不正確であれば、場合によってはコンプライアンスにも関わる大きな問題になりうることも考えると、十分な注意が必要です。

 

コミュニケーションのプロセスを考える際には、ISO14001:2015の附属書A.7.4に列挙された以下の事項を考慮することも重要でしょう。

  • 透明である。すなわち、組織が報告した内容の入手経路を公開している。
  • 適切である。すなわち、情報が、関連する利害関係者の参加を可能にしながら、これらの利害関係者のニーズを満たしている。
  • 偽りなく、報告した情報に頼る人々に誤解を与えないものである。
  • 事実に基づき、正確であり、信頼できるものである。
  • 関連する情報を除外していない。
  • 利害関係者にとって理解可能である。

 

(次回に続く)