【ISO14001】7.4 コミュニケーション(2)

必要な人に、必要なことが伝達されるようにしよう

(前回の続き)

 

「何について」コミュニケーションするか?

「何を」コミュニケーションするかを検討する際には、この規格で要求されている以下のような事項について考慮することが重要です。

  • 有効な環境マネジメントシステムと、環境マネジメントシステム要求事項への適合の重要性(5.1)
  • 環境方針(5.2)
  • 組織内の役割、責任、権限(5.3)
  • 環境マネジメントシステムのパフォーマンス(トップに対して)(5.3)
  • 著しい環境側面(6.1.2)
  • 環境目標(6.2.1)
  • 請負者を含む外部提供者に対する、関連する環境上の要求事項(8.1)
  • 製品・サービスの輸送・配送(提供)、使用、使用後の処理及び最終処分に伴う潜在的な著しい環境影響に関する情報(8.1)
  • 緊急事態の準備・対応に関する関連情報(組織の管理下で働く人々を含む関連する利害関係者に対して)(8.2)
  • 関連する環境パフォーマンス情報(順守義務に従って、内部及び外部に対して)(9.1)
  • 利害関係者との関連するコミュニケーション(9.3)

 

「どのように」コミュニケーションするか?

「どのように」コミュニケーションするかに関しては、様々な方法があり得ます。一般的には会議や文書、掲示、メールといった方法が考えられますが、情報技術の進歩に応じてSNSやオンライン会議システム、動画配信サービスといったものも(当然それらに関連するリスクも考慮した上で)活用できるでしょう。また、組織のダイバーシティ(多様性)の重要性が高まる中、情報を受け取る人の多様性を考慮してコミュニケーションの方法を検討することも重要です。例えば、外国人労働者に対してはその言語能力に応じて当然ながら理解できる外国語での伝達やイラスト・画像等による視覚的な手段による伝達が必要な場合があるでしょうし、障害がある人に対してはそれに応じた方法でコミュニケーションすることが必要なことは言うまでもありません。

 

内部コミュニケーション(7.4.2

7.4.2では内部コミュニケーションに関する要求事項が規定されています。組織の環境マネジメントシステムが有効に機能するためには、内部のコミュニケーションがトップダウンだけでなく、ボトムアップや部門の垣根を越えた水平方向においても十分に行われるようにすることが重要です。そのため、この項目のa)では、環境マネジメントシステムに関連する情報について「組織の種々の階層及び機能間で」コミュニケーションを行うことが要求されています。そして特に環境マネジメントシステムの「変更」についても注意してコミュニケーションをとることが要求されています。

 

またb)では、内部コミュニケーションのプロセスによって、組織の管理下で働く人が継続的改善に寄与できるようにすることが要求されています。これは内部コミュニケーションの目的とも言えるでしょう。コミュニケーションはそれ自体が目的ではなく、正確でタイムリーな情報共有によって組織の管理下で働く人が環境マネジメントシステムの継続的改善に貢献できるようにするために行う、ということです。

 

内部コミュニケーションの方法は、7.3で既に述べたように、組織の規模や複雑さによって大きく異なります。通常、規模の大きな組織や、物理的な場所が一ヶ所ではなく広範囲にわたっているような組織の場合は、そうでない組織に比べてより綿密に計画されたコミュニケーションのプロセスが必要になるでしょう。ここで、プロセスの文書化は特に要求されていませんが、重要なことは必要な程度内部コミュニケーションのプロセスが定められ、その結果、必要な事項が必要な人に十分理解されている状態にある、ということです。従って、内部監査や外部審査においては、組織の人々に対して彼らが理解しているべき事項(環境方針や目標、著しい環境側面や順守義務、環境パフォーマンス、各自の組織における役割や責任権限等)が理解されているかを実際にインタビューすることで確認し、それがどのようなプロセスによって行われているかを確認することにより、本項の要求事項が満たされているかを判断することができます。

 

外部コミュニケーション(7.4.3

7.4.3では、外部コミュニケーションに関する要求事項が規定されています。この場合、「外部」とは外部の利害関係者を意味すると考えられ、具体的には顧客や親会社、購買先や外部委託先、関係官庁、規制当局、業界団体、地域住民等があり得ます(これは、4.2でどのような「関連する利害関係者」があると特定したかによって異なります)。従って、外部のコミュニケーションにおいても、7.4.1のa)〜d)に挙げられた事項を含めてそのプロセスを明確にし、必要なコミュニケーションがとられるようにしなければならなりません。また、外部コミュニケーションにおいては特に法的及びその他の要求事項が関わる可能性が高いため、この点にも注意が必要であることは前述の通りです。