【ISO9001】 8.2 製品及びサービスに関する要求事項(1)
製品・サービスに対して求められていることを明確にしよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「製品・サービスに対して求められていることが何かを明確にしなさい」ということです。そして、この項目は8.2.1~8.2.4から構成されており、それぞれ以下のような内容が規定されています。
- 8.2.1:顧客とどのようなコミュニケーションをとらなければならないか
- 8.2.2:製品・サービスに対してどのようなことが要求されるか
- 8.2.3:製品・サービスに対する顧客からの要求をどのようにレビューするか
- 8.2.4:製品・サービスに対する要求事項の変更にどのように対応するか
顧客とのコミュニケーション(8.2.1)
この項目では、顧客とのコミュニケーションに含まれる必要がある事項が以下のように明示され、そのためのプロセスを確立することが要求されています。
- 製品・サービスに関する情報を提供する
- 引合い、契約、注文を処理する(変更を含む)
- 製品・サービスに関する顧客からのフィードバックを入手する(苦情を含む)
- 顧客所有物をどのように取り扱い、管理するか
- 関連する場合、不測の事態が発生したときにどのように対応する必要があるかを決める
a)からc)について顧客とコミュニケーションする、というのは当然のことでもあるので特に問題ないでしょう。d)については、どのような顧客所有物があるかにもよりますが(顧客所有物の管理については8.5.3で別途規定されています)、例えば顧客から支給された設備や機器、材料を使って製造する場合や顧客から支給されたデータを用いて作業を行う場合などには、顧客から特別な管理を要求されることもあるでしょう。そのようなことについては顧客ときちんとコミュニケーションをとって必要な取扱いや管理が行われるようにしなければなりません。e)の「不測の事態への対応」に対しては、どのような「不測の事態」があり得るかを考慮し、そのような事態に対応する中で必要な顧客とのコミュニケーションを明確にすることが重要でしょう。例えば、市場に出た製品の重大な不具合に対するリコール、製品の引き渡し輸送中の事故、自然災害での生産の遅延等が考えられるかもしれません。
この項目は、7.4で規定されている「外部コミュニケーション」の一類型であり、外部の利害関係者とのコミュニケーションのうち、特に顧客とのコミュニケーションの際に満たさなければならないことが規定しています。7.4では、コミュニケーションにおいて「何についてコミュニケーションするか」(a)を決定しなければならないと要求していましたが、顧客とのコミュニケーションにおいてはここで具体的に規定されている5つのことが最低限の事項として規定されていると考えられます。従って、顧客とのコミュニケーションのプロセスを検討する際には、ここで規定された5つの事項について、それらを「いつコミュニケーションするのか」(b)、「誰とコミュニケーションするか」(c)(潜在顧客であればどのような顧客タイプか、既存顧客であればどの顧客か、等)、「どのようにコミュニケーションするのか」(d)、「誰がコミュニケーションするのか」(e)を考えることになるでしょう。
この中で、特に「どのようにコミュニケーションするのか」については、組織の規模や製品・サービス、どのような顧客を相手にしているかといった状況によって大きく異なります。例えば、規模も小さく、特定の顧客との間でほとんどのビジネスが行われているような組織の場合では、組織と顧客の距離は近く、組織のトップも含めて日頃から顧客と緊密なコミュニケーションが取られているでしょう。そのような場合は、これらの日常的な訪問をはじめとしたやり取りの中で、この項目で要求されているa)〜e)のような必要な事項がコミュニケーションされていることが多いでしょう。他方、大規模な組織や、いわゆる市場型の製品・サービスを提供している組織の場合は、顧客も不特定多数となるため、a)〜e)の事項について適切にコミュニケーションするには、より綿密に計画されたプロセスが必要になると思われます。
この項目では、顧客とのコミュニケーションの結果を文書化する(記録する)ことは要求されていませんが、特に顧客からのフィードバックについては、その結果が8.7「不適合なアウトプットの管理」、9.1.2「顧客満足」、9.1.3「分析及び評価」といった項目とも関連し、その後の修正や是正処置、データ分析と評価等を通じた改善につなげられる必要があるため、ある程度の文書化が必要になってくるでしょう。
(次回に続く)