【ISO9001】7.4 コミュニケーション

必要な人に、必要なことが伝達されるようにしよう

この項目の要求事項を一言で言うと、品質マネジメントシステムが効果的に運用されるようにするために、内部及び外部の必要な人に、必要な事項が適切なタイミングで伝達されるようにしなさい」ということです。

コミュニケーションの「プロセス」

組織の不祥事が依然として後を絶ちませんが、その中にはコミュニケーションの悪さに起因しているものも多く見受けられます。また、不祥事にまでは至らなくても、コミュニケーションがうまく機能しないことで同じ問題が繰り返されるなど、製品・サービスの一貫した適合に悪影響が出ていることも多いでしょう。組織の品質マネジメントシステムが有効に機能するためには、コミュニケーションがトップダウンだけでなく、ボトムアップや部門の垣根を越えた水平方向においても十分に行われるようにすることが非常に必要です。

 

個々の人が適切な行動をとるためには、タイムリーで正確な情報を把握することが必要不可欠です。そして、誰がどのような情報を必要とするかは、その人の役割や責任、立場によって異なるでしょう。従って、適切な人に、適切な情報が、適切なときに伝達されるようにするためには、計画性のない、「行き当たりばったり」のコミュニケーションではうまくいかない可能性が高くなってしまいます。これは、組織の規模や複雑さによっても大きく左右されますので、それぞれの組織の状況に合ったコミュニケーションの「プロセス」や「仕組み」を明確にすることが重要です。一般的に言えば、規模の大きな組織や、複雑な組織(例 物理的な場所が広範囲に存在する、組織の構成が多くの階層や部門に分かれている等)の場合は、そうでない組織に比べてより綿密に計画されたコミュニケーションのプロセスが必要になるでしょう。

 

この「プロセス」を明確にする際に、a)~e)に挙げられた事項を考慮する必要があります。

a) 「何について」コミュニケーションするか(内容)
b) 「いつ」コミュニケーションするか(時期)
c) 「誰と」コミュニケーションするか(対象者)
d) 「どのように」コミュニケーションするか(方法)
e) 「誰が」コミュニケーションするか(実施者)

 

イラスト

内部・外部コミュニケーションの「プロセス」を考える

「何について」コミュニケーションするか

a)~e)の内容は、基本的に組織がそれぞれで考えるべきことですが、一部規格で要求している部分もあります。例えば、a)の「何について」コミュニケーションするか、という点については、規格で「伝達」や「コミュニケーション」したり、「認識」させたりすることを要求している項目として以下のようなものが挙げられています。

・ 有効な品質マネジメントと、品質マネジメントシステム要求事項への適合の重要性(5.1 f)
・ 品質方針(5.2.2 b, 7.3 a)
・ 関連する役割に対して割り当てられた責任及び権限(5.3)
・ 品質目標(6.2.1 f, 7.3 b)
・ 品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献(7.3 c)
・ 品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味(7.3 d)
・ 顧客とコミュニケーションすべき事項(8.2.1 a~e)
・ 変更された、製品及びサービスに関する要求事項(8.2.4)
・ 外部提供者への伝達事項(8.4.3 a~f)

「誰と」コミュニケーションするか

また、c)の「誰と」コミュニケーションするか、という点については、この項目で「内部及び外部のコミュニケーション」と言われていることからも分かるように、組織内の人だけでなく、組織外の人も含まれます。ここで言う「組織外の人」は外部の利害関係者を意味すると考えられ、具体的には顧客、購買先や外部委託先、ディーラーやパートナー、ユーザーグループ、関係官庁、規制当局、業界団体等があり得ます(これは、4.2でどのような「関連する利害関係者」があると特定したかによって異なります)。

 

但し、このうち顧客とのコミュニケーションについては8.2.1で更に個別に要求されており、また購買先や外部委託先などの「外部提供者」とのコミュニケーションについては8.4.3で規定されているので、コミュニケーションのプロセスについて考える場合はそちらも参照する必要があります。

 

なお、この項目には文書化の要求事項はありません。従って、コミュニケーションのプロセスや仕組みが文書化されていなくても、定められた仕組みに基づいてコミュニケーションがとられた結果、必要なことが必要な人に十分理解されている状態にあれば良い、ということになります。これを内部監査や外部審査で検証する際には、組織の人々に対して彼らが理解しているべき事項が適切に理解されているかを実際にインタビューすることで確認し、それがどのようなプロセスによって行われているかを確認することになるでしょう。

 

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