【ISO9001】8.2 製品及びサービスに関する要求事項(2)

製品・サービスに対して求められていることを明確にしよう

(前回の続き)

製品及びサービスに関する要求事項の明確化(8.2.2

この項目は少し理解するのが難しい項目かもしれません。この項目を理解するには、次の8.2.3と対比して考えると分かりやすいでしょう。次の8.2.3は具体的な特定の顧客から正式な引合いや注文が入ってからの活動を対象としているのに対して、この8.2.2はそれよりも前の段階で実施すべきことを規定した項目と考えることができます。

特定の顧客からの正式な引合い前の段階、ということは、例えば市場型製品の場合であれば、マーケティングから新商品の企画に至る段階であり、また受注型製品の場合であれば提案営業を通じて製品・サービスの仕様を詰めていく段階ということができるでしょう。

例えば、海外での販売展開を計画している一般消費財の製造業の場合であれば、その国の習慣や嗜好(食品であれば宗教的な要素も考慮する必要があるでしょう)、製品に関連したその国の法規制(電気・電子製品を欧州へ輸出する場合はRoHS指令やREACH規制等)、といった要求事項を事前に明確にする必要があります。

上記のことから、この項目の要求は設計・開発と重なる部分も出てくる場合もあるでしょうが(特に8.3.3の「設計・開発へのインプット」)、「どこからどこまでが8.2.2」、「どこからが8.3.3」というように考えるのではなく、あくまで組織の実際の活動を元に考えることが重要です。そして、そのように考えた場合、ある活動が結果的に規格の複数の要求事項(ここで言えば8.2.2と8.3.3)に対応している、ということがあっても構わないのです。

製品及びサービスに関する要求事項のレビュー(8.2.3

8.2.2に対して、8.2.3は具体的な顧客から正式な引合いや注文が入った後の活動について規定した要求事項です。この項目は更に2つに分かれ、前半の8.2.3.1では、顧客から正式な引合いや注文があった際に、以下を含めて製品・サービスに関連する要求事項をレビューし、その内容をしっかり確認し、組織がその要求事項を確実に満たすことができることを確認した上で、顧客に受諾の回答をしなければならないことが規定されています。

  1. 顧客が規定した要求事項(引渡し・引渡し後の活動に関する要求事項を含む)
  2. 顧客が明示しないが、意図された用途に応じた要求事項(暗黙の要求事項)
  3. 組織が規定した要求事項
  4. 適用される法令・規制要求事項
  5. 以前とは異なる契約・注文の要求事項

さらに注記では、インターネット販売の例に関しても言及されています。これはインターネットを通じた電子的な販売がますます一般的になっている現状を反映しています。インターネット販売では、ホームページ上に掲載された商品情報を元に顧客がクリックして売買契約が成立するため、その個々の注文(クリック)に対して上記のようなレビューを行うことは現実的ではありません。このような場合は、ホームページ上のカタログや広告用媒体にある情報の正確さを信じて顧客が注文するため、それらの情報が正確であり、実際に組織が提供できる内容であることを確認することでこのレビューに代えることができる、ということが言われています。

後半の8.2.3.2では、上記のレビューの結果、及び製品・サービスに関する新たな要求事項について文書化した情報(記録)を保持することが要求されています。顧客からの注文が注文書や電子メールといった文書で行われる場合はもちろんそれが該当しますが、そのような文書で示されない場合でも、その内容を確認した結果を示す何らかの記録を残すことがリスク管理上重要です。これはレビューの結果最終的に確定し、合意した要求事項がどのようなものであるかを明確にすることで不明確な点をなくし、後々顧客との間で理解の相違からくる問題の発生を防ぐことを目的としています。従って、特に注文変更等の場合には特に注意する必要でしょう。

製品及びサービスに関する要求事項の変更(8.2.4

この項目では、製品・サービスに対する要求事項に変更があった場合に必要なことが規定されています。このような要求事項の変更があった場合、それに対して適切な対応がなされないと、後のプロセスで問題が発生してしまうリスクが高くなります。従って、このような変更があった場合には、

  • 関連する文書の変更
  • 関連する人への伝達

を確実に行うことが要求されています。

「関連する文書の変更」とは、典型的には要求事項の変更に伴う契約書や仕様書、注文書の変更が該当するでしょう。また「関連する人への伝達」は、必要に応じて組織外の人(例 外部委託先)を含めた関連する人に対して、7.4で検討したコミュニケーションのプロセスを通じて確実かつタイムリーに必要な事項を伝達することが重要です。

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◆講師:J-VAC 代表取締役副社長 森田裕之
◆総収録時間:4時間10分