【ISO45001】9.1.1 (モニタリング、測定、分析及びパフォーマンス評価)一般(1)
労働安全衛生マネジメントシステムがうまく機能しているかを評価しよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「労働安全衛生マネジメントシステムの結果をモニタリング・測定・分析し、有効に機能しているかを評価しなさい」ということです。この項目は、モニタリング、測定、分析、評価に関する一般的・概説的な要求をしている項目です。
「モニタリング」「測定」とは何か
この項目では、モニタリング・測定の対象・方法と時期、分析・評価の方法と時期を明確にすることで、モニタリング、測定、分析、パフォーマンス評価の仕組みを構築し、運用することが求められています。
それでは、ここで言われている「モニタリング」「測定」「分析」「評価」とはどのようなことを意味するのでしょうか。「モニタリング」と「測定」については規格で以下のように定義されています。
- 「モニタリング(monitoring)」:「システム、プロセス又は活動の状況を明確にすること」(3.30)
- 「測定(measurement)」:「値を確定するプロセス」(3.31)
また、附属書A.9.1.1では、モニタリングと測定に関して更に以下のような説明がされています。
- モニタリングには、必要な又は期待されるパフォーマンスレベルからの変動を特定するための状況の継続的なチェックや監督、批判的観察、判断を含めることができる。
- モニタリングは、労働安全衛生マネジメントシステムやプロセス、管理に適用することができる。
- モニタリングの例として、面談の実施、文書化した情報のレビュー、実行した作業の観察が挙げられる。
- 測定は定量的データの基本であり、一般に安全性プログラムや健康調査のパフォーマンス評価に付随する。
- 測定の例として、校正された又は検証された機器の使用による有害物質へのばく露の測定、危険源からの安全距離の算出が挙げられる。
「分析」「評価」とは何か
「分析」と「評価」は規格には定義がないので、辞書を見ると、以下のような定義がされています(”Oxford Advanced Learner’s Dictionary”)。
- 「分析(analyze)」:「あることを理解又は説明するために、特に部分に分けることによって、その性質や構造を調べること」
- 「評価(evaluate)」:「注意深く考えた上で、あることの量、価値、質などに関する意見を形成すること」
これを見ると、簡単にいうと、分析とは「調べること」であり、評価とは「意見を形成すること」ということができます。従って、この項目では、監視・測定によって得られた結果を「調べ(分析)」、それによって労働安全衛生パフォーマンスや労働安全衛生マネジメントシステムの有効性について、それらがどのような状況にあるのかについて「意見を形成する(評価)」ことが求められていると言えます。言い換えれば、いくら分析されていても、何も意見が形成されていないのであれば、それは評価されていないのと同じであり、そのような「分析のための分析」にならないようにすることが重要です。
附属書A.9.1.1では、「分析」と「パフォーマンス評価」について以下のような説明が加えられています。
- 分析は、関係やパターン、傾向を明らかにするためにデータを調査するプロセスである。
- 分析のプロセスは、ほとんどの場合、測定活動に関係する。
- パフォーマンス評価は、労働安全衛生マネジメントシステムの目標を達成することに関する、評価対象の適切性、妥当性、有効性を確定するために行われる活動である。
(次回に続く)