【ISO45001】6.1.3 法的要求事項及びその他の要求事項の決定

義務として守らなければならない事項を特定し、何をしなければならないかを明確にしよう

この項目の要求事項を一言で言うと、組織は、義務的に守らなければならない事項にどのようなものがあるかを特定し、それに対して何をしなければならないかを明確にしなければならないということです。

「法的要求事項及びその他の要求事項」とは?

ここで言う「法的要求事項及びその他の要求事項」とは、組織が順守しなければならない「義務的な事項」を意味します。そして「義務的な事項」には、「法的要求事項」のように公的に順守の義務が課せられるものだけでなく、組織自身がそれを順守することを自主的に誓約した「その他の要求事項」も含まれます。附属書A.6.1.3ではそれぞれの例が以下のように示されています。

  • 法的要求事項
    • 法律及び規則を含む(国の、地域の又は国際的な)法令
    • 政令及び指令
    • 監督機関が発令する命令
    • 認可、免許又はその他の形の許可
    • 裁判所又は行政審判所の判決
    • 条約、協定、議定書
    • 包括的労働協約
  • その他の要求事項
    • 組織の要求事項
    • 契約条件
    • 雇用契約
    • 利害関係者との契約
    • 衛生当局との契約
    • 強制ではない標準、コンセンサス標準及び指針
    • 任意の原則、行動規準、技術仕様書、宣言書
    • 組織又はその親組織の公的なコミットメント

「法的要求事項及びその他の要求事項」の特定

組織がまず実施すべきことは、これら自分たちの組織が守られなければならない「義務的な事項」にどのようなものがあるのかを特定し、その情報を入手することです。これらの事項は常に変更の可能性がある(義務的な事項の内容自体が変わることもあれば、組織の状況が変わることによって従来は適用されなかったものが適用されるようになることもある)ため、組織は常にこの情報を監視し、変更があれば最新の情報を入手できるようになっている必要があります。

そのためには、法務部のような機能をもつ組織であればそこを通じて監視されるでしょうし、そうでない場合は外部の専門サービスや親会社や業界団体からの情報入手を利用することもあるでしょう。いずれにしても、組織はそのプロセスを通じて「法的要求事項及びその他の要求事項」の最新情報が入手できるようになっており、そしてその内容は文書化することが要求されています。

「法的要求事項及びその他の要求事項」への対応

「法的要求事項及びその他の要求事項」を順守できるようにするためには、それらを特定しただけでは十分ではなく、それらの要求事項が具体的にどのような形で組織に関わり、具体的にどのような対応をする必要があるのかを明確にし、それが必要な程度、必要な人に対して伝達される必要があります。実際には、それらを順守できるようにするために、必要な程度関連する手順が明確にされることが重要でしょう。そして、先の5.4で見たように、この「法的要求事項及びその他の要求事項を満たすための方法」を決定するプロセスでは、非管理職と協議が行われるようになっていなければならないことにも注意が必要です(下図参照)。

イラスト

「法的要求事項及びその他の要求事項」の考慮

「法的要求事項及びその他の要求事項」を満たすことは労働安全衛生マネジメントシステムを有効に運用する上で必須のことですので、労働安全衛生マネジメントシステムを構築・運用・改善する際に、常にここで特定された要求事項を考慮に入れ、マネジメントシステムを継続的に運用し、必要に応じて変更する中でこれらの要求事項が満たされなくなってしまうということのないようにしなければなりません。

上記のような理由から、「法的要求事項及びその他の要求事項」は以下のようなISO45001の規格の様々な項目で参照されています。ここからも「法的要求事項及びその他の要求事項」を満たすことの重要性が強調されていると言うことができます。

4.2 法的要求事項及びその他の要求事項(又はその可能性のあるもの)を決定する。
5.2 労働安全衛生方針に、法的要求事項及びその他の要求事項を満たすことへのコミットメントを含む。
5.4 法的要求事項及びその他の要求事項を満たす方法を決定することに対して、非管理職との協議に重点を置く。
6.1.1 リスク及び機会を決定するときに、法的要求事項及びその他の要求事項を考慮に入れる。
6.1.4 法的要求事項及びその他の要求事項に対処するための取組みを計画する。
7.4.1 コミュニケーションのプロセスを確立するとき、法的要求事項及びその他の要求事項を考慮に入れる。
7.4.3 法的要求事項及びその他の要求事項を考慮に入れて、外部コミュニケーションを行う。
7.5.1 文書化した情報の程度は、法的要求事項及びその他の要求事項を満たしていることを実証する必要性によって異なる場合がある(注記)。
8.1.2 多くの国で、法的要求事項及びその他の要求事項に、個人用保護具(PPE)が働く人に無償支給されるという要求事項が含まれる(注記)。
8.1.3 法的要求事項及びその他の要求事項の変更を含む、労働安全衛生パフォーマンスに影響を及ぼす、計画的、暫定的及び永続的変更の実施と管理のためのプロセスを確立する。
8.1.4.3 外部委託の取決めが法的要求事項及びその他の要求事項に整合していることを確実にする。
9.1.1 法的要求事項及びその他の要求事項の順守の程度を含めた、モニタリング及び測定が必要な対象を決定する。モニタリング及び測定機器の校正又は検証に関する法的要求事項又はその他の要求事項が存在することがあり得る(注記)。
9.1.2 法的要求事項及びその他の要求事項の順守を評価するためのプロセスを確立、実施、維持する。法的要求事項及びその他の要求事項の順守状況に関する知識と理解を維持する。
9.3 法的要求事項及びその他の要求事項を含む、外部及び内部の課題の変化をマネジメントレビューで考慮する。

法的要求事項及びその他の要求事項の順守評価の結果を含めた、労働安全衛生パフォーマンスに関する情報をマネジメントレビューで考慮する。