【ISO45001】6.1.2.2 労働安全衛生リスク及び労働安全衛生マネジメントシステムに対するその他のリスクの評価(2)

労働安全衛生に関連するリスクを明らかにしよう

(前回の続き)

「労働安全衛生リスク」をどのように評価するか?

「労働安全衛生リスク」は、ISO45001で以下のように定義されています。

「危険な事象やばく露の起こりやすさと、それによって生じ得る負傷や疾病の重大性との組合せ」(3.21)

ここから分かるように、「労働安全衛生リスク」は「起こりやすさ」と「結果の重大性」に関係するものですので、それを評価するプロセスも、最低限これらの2つの要素を評価基準に含む必要があるでしょう。

以前のOHSAS18001では「リスクアセスメント」の定義が与えられており、それによると、「危険源から生じるリスクを評価するプロセスで、かつ、既存のすべての管理策の妥当性を考慮し、リスクが受容可能であるか否かを決定するもの」とされていましたが、ISO45001にはこの用語と定義は規定されていません。しかし、実質的にはここで言う「労働安全衛生リスク」の評価はOHSAS18001で言う「リスクアセスメント」と同じと考えられるため、この定義は労働安全衛生リスクの評価プロセスを検討する際に参考になるでしょう。つまり、労働安全衛生リスクの評価プロセスでは、以下のことが適切に実施されるようになっていることが重要です。

  • 危険源から生じる危険な事象やばく露の「起こりやすさ」と、それによって生じ得る負傷や疾病の「重大性」を評価する
  • 既存の管理策の妥当性を評価する
  • 結果として評価されたリスクの受容可能性を評価する

労働安全衛生リスクを評価する方法に唯一のものはなく、様々な方法を使用することができます。附属書A.6.1.2.2で言われているように、この評価の方法とその複雑は、組織の規模が大きいか小さいかで決まるのではなく、その組織の活動に付随する危険源がどのようなものかによって決まるべきです。つまり、小規模な組織であってもその活動に関連する危険源が大きなリスクをもたらすようなものである場合には、リスク評価の方法やその複雑さもそれに応じた詳細なレベルのものが期待されるでしょう。いずれにしても、本項では評価の方法と基準を文書化することが要求されていることに注意が必要です。

すでにOHSAS18001に基づく労働安全衛生マネジメントシステムを構築・運用している組織では、特定した危険源から生じる「労働安全衛生リスク」の評価の仕組みは持っているはずなので、基本的にはそれをそのまま活用すれば良いでしょう。

リスク評価における「ALARP」の考え方とは?

リスクの受容可能性を考える際には、一般的に「ALARP」という概念が参考になります(下図参照)。これは”As Low As Reasonably Practicable”(合理的に実現可能な程度に低い)の頭文字をとったものです。ここではリスク領域として明らかに「許容できない領域(危険領域)」と「広く一般的に受容される領域(安全領域)」があり、その中間領域として「便益が期待される場合に限りリスクを受け入れる」許容可能な領域(不安領域)があると考えられます。

どのレベルであれば「受容可能」か、というのは一概には言えませんが、この考え方からすると、「危険領域」の下限より下のどこか(「不安領域」の中のどこか)ということになるでしょう。従って、リスク評価の結果、「危険領域」とされたリスクに対しては少なくとも「不安領域」(ALARP域)内に入るように何らかの管理策を講じる必要があります。また、「危険領域」にはなくても「不安領域」内にある限りは、「合理的に実現可能か程度に」(=ALARP)リスクを低減することが重要です。

 

イラスト

(次回に続く)