【ISO質問箱】(共通)適切な目標を設定するにはどうしたらいいの?

ISOのマネジメントシステム規格では「目標」を設定し、それを達成するためにマネジメントシステムを運用することが求められています。それではそもそも「目標」を適切に設定するにはどのようなことに注意したら良いのでしょうか?

「目標」はマネジメントシステムの出発点

ISOの全てのマネジメントシステム規格では、それぞれの規格が対象とするテーマ(ISO9001なら品質、ISO14001なら環境、ISO45001なら労働安全衛生)に関して「目標」を設定することが要求されています。

そもそも「マネジメントシステム」とは「方針及び目標、並びにその目標を達成するためのプロセスを確立するための、相互に関連する又は相互に作用する、組織の一連の要素」(ISO9000:2015, 3.5.3)と定義されているように、「マネジメントシステム」とは「目標を達成するためのシステム」ですから、関連する「目標」を設定することが要求されているのは当然のことです。

そう考えると、「目標」の設定はマネジメントシステムの出発点とも言えますし、その設定が間違ってしまうとマネジメントシステム自体が間違った方向に向かって進んでしまいます。アメリカの作家、経営コンサルタントで、世界的なベストセラー『7つの習慣』の著者でもあるスティーブン・コヴィー博士もこのように言っています。

「もし、はしごをかけ違えていたら、一段ずつ昇るごとに間違った場所により早く近づくだけである」

その意味で、適切で効果的な目標を設定することは、マネジメントシステムを効果的に運用する上で非常に重要な要素と言えるでしょう。

しかし、目標に関して審査をする中で、要求されているからとりあえず目標は設定しているけれども、今一つ組織として適切な目標になっていないと感じられている組織も多いように思われます。

適切な目標設定のためには「SMART」に留意することが重要

効果的な目標設定に際して、よく紹介される考え方に「SMARTの法則」というものがあります。これは目標設定する際に注意すべき以下の5つの事項の頭文字をとったものです。

  • Specific(具体的)
  • Measurable(測定可能である)
  • Achievable(達成可能である)
  • Relevant(関連性がある)
  • Time-bound(期限が明確である)

(注:これにはいくつか別のバージョンもあるのですが(特に「A」を「Agreed upon:合意されている」や「Action-oriented:行動を重視している」とするものや、「R」を「Realistic:現実的」や「Result-oriented:結果を重視している」とするものなど)、上記の内容がいちばん一般的と言えるでしょう)

つまり、効果的な目標を設定するには、上記のような5つの要素を考慮すると良い、ということですが、これを見てお気づきのように、これらのうちの大半がISOの規格が要求事項として規定しているものです。

ISO規格の要求事項に従うことで「SMART」にも対応できる

ISO規格では6.2に目標に対する要求事項がありますが、そこでは共通的に以下のことが要求されています。

  • 方針と整合している
  • 測定可能である
  • (目標達成計画の中で)実施事項を明確にする
  • (目標達成計画の中で)実施事項の完了時期を明確にする

(ISO9001:2015の「6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定」の要求事項については、以下の関連ブログもご覧ください↓)

https://j-vac.co.jp/9001-lecture_6-2/

≫【ISO9001規格解説】【ISO14001規格解説】【ISO45001規格解説】のビデオの「6 計画」の中でも「6.2 目標及びそれを達成するための計画策定」の要求事項を解説していますので、ぜひご覧ください(1,000円で1ヶ月間お試しレンタルいただけます)。

【ISO9001規格解説】ビデオはこちら

【ISO14001規格解説】ビデオはこちら

【ISO45001規格解説】ビデオはこちら

これを見ると、ISO規格の要求事項でカバーされていない「SMARTの法則」の要素は「Achievable(達成可能である)」ということくらいでしょう。これは言い換えると目標の「レベル」であり、それは組織の考え方によって大きく異なりますので、どのくらいの「レベル」(難易度)の目標を設定すべきだ、ということを要求事項の規格であるISOのマネジメントシステム規格が規定することはできませんので、仕方のないことと言えます。

目標の「レベル」ということで言えば、普通にやっていれば当然達成できてしまえるようなあまりに低い目標では設定する意味がありませんし、逆にどう考えても達成できないと思われるような高すぎる目標も、それを達成しようというモチベーションを失わせてしまうという意味で適切ではないでしょう。

経営学者のピーター・ドラッカーも「目指すべき成果は難しいものでなければならない。背伸びさせるものでなければならない。だが可能なものでなければならない」と言うように、「不可能ではないが難しい」レベルの目標を設定することが重要と言えます。

従って、ISO規格の6.2の要求事項に従って目標を設定し、それに加えて目標のレベル設定を間違えない、ということが、適切で効果的な目標設定を行う際に肝となると言えるのではないでしょうか。

まとめ

適切な目標設定のためには、まずはISOマネジメントシステム規格の6.2にある要求事項に従って設定し、その上で目標の「レベル」を適切に設定することが重要。