【ISO質問箱】(ISO14001)「著しい環境側面」って結局どういうこと?

ISOのマネジメントシステム規格を理解するのが難しい理由の一つに、その独特の言葉遣いがありますが、ISO14001の「著しい環境側面」はそのようなISO独特の言い回しの最たる例でしょう。1996年に発行された初版のISO14001以来使われてきたこの言葉は結局どのような意味なのでしょうか?

「環境側面」は環境に影響を与える「原因」

「著しい環境側面」とは英語の”significant environmental aspects”の直訳です。そこでまず、”environmental aspects”(「環境側面」)の意味について見てみましょう。

これはISO14001規格で以下のように定義されています。

「環境と相互に作用する、又は相互に作用する可能性のある、組織の活動又は製品又はサービスの要素」(ISO14001:2015, 3.2.2)

また、似たような言葉に「環境影響(”environmental impact”)」という言葉がありますが、これは以下のように定義されています。

「有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織の環境側面から生じる、環境に対する変化」(ISO14001:2015, 3.2.4)

ここから分かるように、環境側面と環境影響は「原因と結果」の関係にあると言えます。例えば以下のような関係です。

<環境側面(原因)>      <環境影響(結果)>

排水の排出(によって)  →  水質汚濁(が起こる)

排ガスの排出(によって) →  大気汚染(が起こる)

原材料の使用(によって) →  資源の枯渇(が起こる)

ISO14001:2015の6.2.1で「環境側面」について規定されていますが、そこではまず環境側面を特定することが要求されています。これは組織の活動や製品・サービスに、環境に対して影響を与えるような要素があるかを洗い出してください、ということです。

「著しい環境側面」は環境側面の中でより「大きな影響」を与えるもの

それでは「著しい環境側面」とは何でしょうか。

「著しい(”significant”)」という言葉を辞書で引くと、以下のような意味が書かれています。

「影響を与えたり気づかれたりするのに十分大きく、又は重要である」(Oxford Advanced Learner’s Dictionary)

つまり、「著しい環境側面」とは「重要な環境側面」「重大な環境側面」といった意味です。

どんな組織にも、様々な「環境側面」(環境に対して影響を与える要素)があります。しかし、全てが同じような重要性、重大性を持っているわけではありません。そして、組織には無限に資源があるわけではありません。従って、その限られた資源をより効果的に活用し、最大限の結果を得るため、組織は環境により大きな影響を持つ環境側面に対して優先的に対処していくべきです。

だからこそ、特定した数ある「環境側面」の中から、より大きな影響を持つ「重大な環境側面」(著しい環境側面)を絞り込むのです。

ISO14001:2015の6.1.2で、「環境側面」を特定した後に、その中から「著しい環境側面」を特定することが求められているのもそのためです。

(ISO14001:2015の「6.1.2 環境側面」の要求事項については、以下の関連ブログもご覧ください↓)

https://j-vac.co.jp/14001_lecture_6-1-2-1/

≫【ISO14001規格解説】のビデオの「6 計画」の中でも「6.1.2 環境側面」の要求事項を解説していますので、ぜひご覧ください(1,000円で1ヶ月間お試しレンタルいただけます)。

【ISO14001規格解説】ビデオはこちら

明確な基準に基づいて「著しい環境側面」を絞り込む

但し、このとき闇雲に「著しい環境側面」を決めれば良いわけではありません。重要なことは、「著しい環境側面」を絞り込む際の明確な「基準」を持つことであり、それによって論理的に一貫した形で「著しい環境側面」が特定できることです。明確な基準がないと、「気分」で決めてしまうことになり、そうすると決める人によって何が「著しい環境側面」かが変わってきてしまう、ということが起こってしまいます。

「著しい環境側面」は、組織の環境活動の出発点とも言える重要な要素です。これを間違ってしまうと、環境にとってあまり効果のない、意味のないことに重要な資源を浪費してしまう、という無駄なことが起こりかねません。そのようなことのないよう、論理的で明確な基準に基づいて、意味のある「著しい環境側面」を特定できるようにしましょう。

まとめ

「環境側面」は環境に影響を与える原因となる要素であり、「著しい環境側面」はその中でもより重要なもの。「環境側面」の中から、論理的で明確な基準に基づいて適切な「著しい環境側面」を特定することが、効果的な環境活動を実施していく上で不可欠。