【ISO9001】組織の人に重要なことをきちんと認識させよう~「7.3 認識」

この項目の要求事項を一言で言うと、「組織の人々に必要なことを認識させなさいということです。そして、認識させなければならない事項がa)〜d)に掲げられています。

● 「認識」とは何か?
それでは、ここでいう「認識(awareness)」とは何を意味するのでしょうか。規格にはこの言葉の定義はありませんので、辞書を引くと以下のように定義されています。

「あることを知っていること、あることが存在していることや重要であることを知っていること、あることに関心を持っていること」(OALD)

上記の辞書の定義から、「認識」とは「知っていること」であることが分かります。7.2のところで、「力量」とは「できること」である、と書きましたが、それとの対比として理解しておくと良いでしょう。

イラスト

「力量」と「認識」の違い

当然「知っていること」と「それに従って行動すること」とは同じではありませんが、ここで要求されているのはあくまで「認識」=「知っていること」です。つまり、「知らないことには始まらない」のであって、最低限の要求としてこれらを「認識=知っていること」を要求していると理解することができます。ただ、だからといって「それに従って行動すること」を無視しているわけではありません。「認識」とは、上記の辞書の定義にもあるように、単に「知っていること」以上に、「それが重要であることを知っていること」も含まれていると考えれば、本当に深く「認識」していれば、それは行動に表れると考えられます。従って、「それに従って行動されていない」場合には、「認識が十分でない」とも考えられ、より深く認識してもらえるような改善が望まれるでしょう。

● 「誰に」「何を」認識させるのか?
「認識」の意味を確認したところで、それでは誰に対して、何を認識させたら良いのでしょうか。まず、「誰に」ということについては、「組織の管理下で働く人々」に対して、となっています。これは、先の7.2と同様の表現になっていますので、7.2と同様に「組織の従業員」だけでなく、派遣社員やパート社員といった人も、組織の管理下で働いている以上含まれるということになります。

そして、「何を」認識させなければならないのか、ということについては、この項目のa)~d)で以下のように規定されています。

a) 品質方針
b) 関連する品質目標
c) 品質マネジメントシステムの有効性に対する自らの貢献
d) 品質マネジメントシステム要求事項に適合しないことの意味

a)及びb)はそのままの意味で特に難しいところはないと思いますが、ここでは必ずしも方針や目標を「暗唱」できるようになっていることを要求しているわけではありません。ここで重要なことは、方針や目標の内容や意義といったことが理解されている、ということです。

これに比べて、c)及びd)は少し抽象的で分かりにくいかもしれません。これらは言い換えると「自分の活動が品質マネジメントシステムにとってどのような意義を持っているのか」「品質マネジメントシステムにおいて自分の活動はどのような位置づけにあるのか」を理解する、と言えるでしょう。つまり、c)では「自分がどのような行動をとれば品質マネジメントシステムに対して良い影響を与えることができるのか」、逆にd)では「自分がどのような行動をとったとき品質マネジメントシステムに悪い影響を与えてしまうのか」、といったことを理解する、ということです。

● 「どのように」認識させるのか?
それではこれらのことを「どのように」認識させたら良いのでしょうか。これについては、組織の規模や複雑さによって当然異なりますので規格は特に規定していません。これは次のコミュニケーションとも関連しますが(7.4)、同じ事柄を認識させる場合でも、対象となる人数が少ない小企業では会議や朝礼等の直接的な方法で十分かもしれませんが、対象となる人数が多い大企業では、直接的な方法では限界があるため、その他にホームページやイントラネット、電子メール、社内報、掲示といった様々な方法が必要となるでしょう。従って、そのようなそれぞれの組織の状況を考慮して適切な方法を組織が決め、それは7.4で要求されているコミュニケーションのプロセスに含まれることになるでしょう。

なお、この項目では特に「文書化した情報の保持」(記録)は要求されていません。ここで重要なのは「記録」を残すことではなく、必要なことが、必要な人に実際に認識されている、ということであり、また認識されるようにするための仕組みがある、ということです。従って、審査においても、「記録」の確認よりも、実際に必要な人が必要なことを認識しているかを「インタビュー」などによって確認することがより重視されるでしょう。