【ISO9001】マネジメントシステムが目指すべき目標を決めよう~「6.2 品質目標及びそれを達成するための計画策定」

この項目の要求事項を一言で言うと、「品質マネジメントシステムが目指すべき目標を設定し、それを達成するための計画を立てなければならない」ということです。この項目の前半(6.2.1)では「品質目標の設定」について、後半(6.2.2)では「品質目標達成のための計画」についてそれぞれ規定されています。

●  「品質目標」とは?
それでは、「品質目標」とは何でしょうか。ISO9000:2015では以下のように定義されています。

「品質に関する目標」(3.7.2)

これではほとんど説明になっていませんので、更に「目標」の定義を見てみると、

「達成すべき結果」(3.7.1)

とありますので、両者を合わせると、「品質目標」とは以下のような意味になるでしょう。

「品質に関して達成すべき結果」

ここで、ISO9000:2015の3.7.1の注記では、目標に関して以下のようなことが補足説明されています。

  • 目標は、戦略的、戦術的又は運用的であり得る。(注記1)
  • 目標は、様々な階層(例 戦略的レベル、組織全体、プロジェクト単位、製品ごと、プロセスごと)で適用できる。(注記2)

また、この項目でも「関連する機能、階層及びプロセスで」目標を設定することが要求されています。

このように目標には様々なレベルが考えられますが、どのようなレベルで目標を設定するかは、組織の状況や規模によって大きく異なるでしょう。一般的には、大規模な組織や複雑な組織の方が、多くの階層や事業分野で設定する必要性が高まるため、目標の体系もより複雑になるでしょう。

なお、ここではあくまで「関連する”relevant”」機能・階層・プロセスですので、例えば組織の全ての部門で品質目標を設定しなければならない、ということでは必ずしもありません。

 どのような目標を設定すべきか?
それでは、どのような目標を設定すべきでしょうか。6.2.1のa)~d)では、品質目標が満たすべき「中身」について規定されています。

まずa)では、「品質方針と整合している」が求められていますが、これは「組織の目的・状況・戦略的方向性〜方針〜目標」とつながる流れが一貫したものであることで初めて、品質マネジメントシステムの活動が組織の真に目指すものに対して有効なものになるという意味で非常に重要です(下図参照)。

イラスト

b)では品質目標が「測定可能(measurable)」であることが要求されています。「測定可能」とは、文字通りには「測れる」という意味になりますが、だからといって必ずしも常に「定量的(数値的)」でなければならない、ということではありません。これについては、ISO14001:2015の附属書A.6.2にある説明が参考になるでしょう。そこでは、「測定可能」とは「目標が達成されているかどうかを決定するために、特定の尺度に対して定量的または定性的のいずれの方法を用いることも可能であることを意味する」と言っています。ここで重要なのは、「目標が達成されたかどうかを決定できる」という点です。従って、必ずしも数値で示されていなくても、達成すべき「結果」のイメージが具体的になっており、それを達成できたかどうかが、誰が見ても客観的に判断できるのであれば、それはここでいう「測定可能」であると言って良いでしょう。

c)では、品質目標は「適用される要求事項を考慮に入れ」ており、d)では「製品及びサービスの適合性」と「顧客満足の向上」に関連していることが要求されています。これは、品質マネジメントシステムが「顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及びサービスを一貫して提供」し、「顧客満足の向上」を実現することを目的とした規格であることを考えれば当然のことと言えるでしょう(「1 適用範囲」参照)。これらは、言い換えれば、品質目標は「顧客の視点」から見た品質に関連していなければならず、「組織の視点」から見た有効性や効率性「だけ」では適切ではないことを意味しています(例えば、顧客満足や製品・サービスの適合性との関連性が考慮されていない、単なる売上増加や利益向上「だけ」では、「品質」目標としてはこの項目の要求事項を満たしているとは言えないでしょう)。

●  どのように目標を運用すべきか?
上で見たように、a)からd)が品質目標の「中身」に関する要求であるのに対し、続くe)からg)は品質目標の「運用」に関する要求であると言えます。ここでは、品質目標の達成状況を監視し(e)、品質目標を伝達し(f)、必要に応じて品質目標を更新する(g)ことが要求されています。

組織にとって意味のある適切な品質目標を設定することは非常に重要なことです。しかし、それを設定した「だけ」では意味はありません。それがきちんと組織内の人々に理解されなければ、目標に向けた活動が実施されないでしょうし、その達成状況が監視されなければ、目標達成ができそうかどうかが分からず、途中で目標達成に必要な軌道修正ができないでしょう。そして、目標を設定したときと状況が変わったときには目標自体も必要に応じて見直して更新しなければ、組織にとって意味のない目標を追いかけることになってしまうかもしれません。ここでは、そのようなことのないように、目標を適切に運用することが要求されているのです。

●  目標を達成するための計画
後半部分(6.2.2)では、品質目標の達成計画について要求されています。目標を達成するためには、それが日々の実際の活動につながるように、「計画」が立てられることが非常に重要です。ここでは、この目標達成のための計画を立てる際に満たさなければならないことが以下のように規定されています。

a) 何をすべきか(実施事項)
b) どのような資源が必要か(必要な資源)
c) 誰が責任を持つか(責任者)
d) いつまでに完了するか(実施事項の完了時期)
e) 結果をどのように評価するか(結果の評価方法)

ここでの重要なことは、計画の「具体性」です。目標達成の可能性を高めるためには、ここで要求されているような事項に対して十分に具体的な計画が立てられていなければなりません。しかしながら、この計画が単なる「進捗の確認」のようなものになってしまっているケースも見られますので、そのようなことのないよう注意が必要でしょう。

例えば、「品質保証部門スタッフのデータ分析スキルの向上」という目標であれば、その達成計画では以下のようなことを明らかにすることが必要でしょう。

 何をするか?・・・データ分析のための統計的手法の教育
 どのような資源が必要か?・・・教材、講師
 誰が責任者か?・・・品質保証部長
 いつ完了するか?・・・2019年10月末
 結果はどのように評価するか?・・・理解度試験を実施