【ISO45001】8.1.3 変更の管理

変更による労働安全衛生リスクを最小限に抑えよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「運用の変更による労働安全衛生リスクを最小限に抑えるために変更を管理しなさい」ということです。物事が通常通り進んでいる場合は特に問題が起こらないことが多いですが、実際の状況では何の変更もないということはまずありません。意図しているかいないかに関わらず、何らかの変更があった場合、それが問題を引き起こすリスクは高まりますから、そのような状況でも問題が発生しないように管理することは非常に重要なことです。

変更管理の目的

この項目では「変更の管理」が要求されていますが、ISO45001:2018の附属書A.8.1.3は、この変更管理を行う目的として、「変更が生じた際に、新たな危険源及び労働安全衛生リスクが作業環境に取り込まれることを最小限に抑えることによって、職場の労働安全衛生を向上させること」と言っています。

 

マネジメントシステムの共通的な要求事項として附属書SLでは、組織の状況やそれに伴うリスク・機会の変化を捉えることが重視されていますが、その結果マネジメントシステムは当然ながらそれらの変化の影響を受けて変更を余儀なくされることが考えられます。従来のような「硬直的な」マネジメントシステムの運用にならないためにこれは重要なことであり、そのために附属書SLの8.1で変更の管理が規定されているのですが、ISO45001ではそれを更に詳細な要求事項として独立した項目として規定していると考えられます。

「計画的な変更」の管理

この項目の前半では、運用において計画的な変更(暫定的である場合もあれば永続的な場合もある)が発生した場合、それに対して適切な管理を行うことができるようなプロセスを確立することが要求されています。

 

ここで言う変更には以下のようなものが含まれます。

  1. 新しい製品、サービス、プロセス、又は既存の製品、サービス、プロセスの変更(以下を含む)
    • 職場の場所及び周りの状況
    • 作業の構成
    • 労働条件
    • 設備
    • 労働力
  2. 法的及びその他の要求事項の変更
  3. 危険源や労働安全衛生リスクに関する知識や情報の変化
  4. 知識や技術の発達

 

注記にもあるように、このような変更は、リスクになることもあれば機会になることもあります。例えば、上記のd)の例として、昨今のドローンやロボットといった新しい技術の発達により、従来人間が実施していた作業をこれらの機械が実施することができるようになることでより安全性の高い作業にする機会とすることができるでしょう。

「意図しない変更」への対応

また、後半では上記のような「計画的」な変更ではない「意図しない変更」についても、その結果をレビューし、必要に応じて有害な影響を軽減するための処置を要求しています。変更が計画的に行われる場合は、それに対する管理も「計画的に」行うことができますが、「意図しない変更」の場合は、それがどのようなものかが分かりませんから、その結果を事後的にレビューし、それによって有害な影響が起こっていたり、そのような影響が増大する可能性がある、といった場合は、それらを早急に軽減するための処置が必要です。

 

ただ、これもリスクに基づく思考をうまく用いることで、ある程度どのような「意図しない」変更が起こり得るのかも想定することができるでしょうし、そうすることでより計画的な対応が可能になれば、マネジメントシステムにとってはより望ましい対応ということになるでしょう。

 

なお、5.4で要求されているように、プロセスの変更管理の方法や、それらの効果的な実施と活用を決定する際には、非管理者が参加しなければならないことにも注意する必要があります。