【ISO45001】7.1 資源

労働安全衛生マネジメントシステムに必要な資源を使えるようにしよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「労働安全衛生マネジメントシステムに必要な資源が使用できるように維持しなさい」ということです。

「資源」とは?

この項目は資源に関する一般的な要求事項です。従って、ここでは「必要な資源を決定し、提供しなければならない」という一般的なことしか言われていません。しかし、資源がなければ労働安全衛生マネジメントシステムを実際に動かすことはできないことを考えると、この「資源を提供する」ということは、労働安全衛生マネジメントシステムにとって非常に重要な要素です。

ここで言う「資源」とは、具体的にどのようなことを言っているのでしょうか。附属書A.7.1では、「資源」に含まれる者として「人的資源、天然資源、インフラストラクチャ、技術及び資金」が挙げられています。そしてこの中の「インフラストラクチャ」の例としては「組織の建物、プラント、設備、公共設備、情報技術、通信システム、緊急時封じ込めシステム」が挙げられています。

イラスト

「資源」に含まれるもの

必要な資源を提供するためにはどうしたら良いのか?

それではこれを実行するためにはどうしたら良いのでしょうか。ここでも重要な考え方は「PDCAサイクル」です。つまり、どのような資源が必要なのかを「計画(決定)(P)」し、それに基づいて「実施(提供)(P)」し、その結果を「チェック(C)」し、必要な「改善(A)」する、ということです。この項目では、必要な資源を「決定」し、「提供」することが要求されており、後で見る9.3(マネジメントレビュー)では、e)で「有効な労働安全衛生マネジメントシステムを維持するための資源の妥当性」をマネジメントレビューで考慮することが要求され、また「必要な資源」に関する決定をマネジメントレビューからのアウトプットに含めることが要求されています。9.3で要求されていることは、要するに現在の資源で十分かどうかを検討し、必要であれば追加の資源について決定する、ということですから、「PDCAサイクル」のうちのCとAについて言っていると考えられます。

このように、資源が十分かどうか、必要な資源はないかどうかについてはマネジメントレビューにおいて、トップマネジメントが検討し決定することが要求されており、またすでに見た5.1(リーダーシップ及びコミットメント)のd)でも、「労働安全衛生マネジメントシステムの確立、実施、維持及び改善に必要な資源が利用可能であることを確実にする」ことがトップマネジメントに求められています。これらからも分かるように、必要な資源を決定し、提供する責任はトップマネジメントにあります。それはなぜかというと、資源を提供するためにはそれ相応のコストがかかり、そのコストの配分を最終的に決定できるのはトップマネジメントしかいないからです。従って、トップマネジメントが口だけで「労働安全衛生マネジメントシステムが重要だ」と言っても、それに必要な資源の提供が伴っていなければ、トップマネジメントは労働安全衛生マネジメントシステムに関するリーダーシップとコミットメントを十分示しているとは言えないのです。