【ISO45001】6.2 労働安全衛生目標及びそれを達成するための計画(1)

マネジメントシステムが目指すべき目標を決めよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「労働安全衛生マネジメントシステムが目指すべき目標を設定し、それを達成するための計画を立てなければならない」ということです。この項目の前半(6.2.1)では「労働安全衛生目標の設定」について、後半(6.2.2)では「労働安全衛生目標達成のための計画」についてそれぞれ規定されています。

「労働安全衛生目標」とは?

それでは、「労働安全衛生目標」とは何でしょうか。ISO45001規格では以下のように定義されています。

「労働安全衛生方針に整合する特定の結果を達成するために組織が定める目標」(3.17)

また、「目標」とは以下のように定義されています。

「達成する結果」(3.16)

要するに、「労働安全衛生目標」とは、労働安全衛生方針に整合し、労働安全衛生に関して組織が達成したいと思う結果を示したもの、ということができるでしょう。

このような労働安全衛生目標を「関連する部門及び階層で」設定することが要求されていますが、これは必ずしも「すべての」部門や階層で目標を設定しなければならないということではありません。例えば、「死亡事故ゼロ」や「休業災害ゼロ」といったより上位の目標だけでは、それぞれの働く人は具体的にどのような行動をとれば良いかが必ずしも明確ではありません。ここで重要なことは、これらのより上位の目標を達成するために、それぞれの人が具体的にどのような方向性で行動をとれば良いのかがわかるように、必要に応じてその達成に関連する部門や階層で細分化し、人々の行動をより上位の目標の達成に向けて方向付けることです。

これに関して、附属書A.6.2.1では、「目標は戦略的目標、戦術的目標、運用上の目標とすることができる」と記述され、以下のような説明がされています。これも上記のような目標の細分化による具体化といったことを意図していると考えることができます。

  • 戦略的目標:労働安全衛生マネジメントシステムの全体的なパフォーマンスを向上させるために設定できる(例 騒音にばく露されないようにすること)
  • 戦術的目標:施設、プロジェクト又はプロセスレベルで設定できる(例 発生源での騒音の低減)
  • 運用上の目標:活動レベルで設定できる(例 騒音低減のための各機器の囲い)

どのような目標を設定すべきか?

それでは、組織はどのような目標を設定すべきでしょうか。6.2.1のa)~c)では、労働安全衛生目標が満たすべき「中身」について規定されています。

a)では、「労働安全衛生方針と整合している」ことが要求されています。これは「組織の目的・状況〜方針〜目標」とつながる流れが一貫したものであることで初めて、労働安全衛生マネジメントシステムの活動が組織の真に目指すものに対して有効なものになるという意味で非常に重要です(下図参照)。

イラスト

b)では目標が「(実行可能な場合)測定可能、又はパフォーマンス評価が可能」であることが要求されています。これについては、附属書A.6.2.1で目標の測定は定性的・定量的のどちらで行うこともできると説明されていることからも分かるように、必ずしも数値で目標を立てる必要はなく、例えば「調査、面接、観察から得られる結果」のような定性的なものもあり得るということを意味します。但しその場合であっても、達成すべき「結果」のイメージが具体的になっており、それを達成できたかどうかが、誰が見ても客観的に判断できることが重要です。

c)では、労働安全衛生目標が考慮に入れる必要がある項目として、以下の3つが挙げられています。

  • 関連する要求事項
  • リスク・機会の評価結果
  • 働く人やその代表との協議の結果

「関連する要求事項」には、労働安全衛生に関連する法的要求事項もあれば、顧客や業界団体、親会社、近隣住民等からの要求事項、さらには組織自身の要求事項もあるでしょう。

リスク・機会の評価結果を考慮に入れるとは、6.1.2.2、6.1.2.3で評価したリスク及び機会のうち、目標につなげて取り組むことがあり得ることを意味していますが、附属書A.6.2.1にもあるように、特定したリスク・機会のすべてに対して目標を設定しなければならないということを意味しているわけではないことに注意が必要です。

働く人やその代表との協議の結果も目標の中で考慮に入れなければならない、と要求されていますが、これは5.4で労働安全衛生目標を設定し、その達成を計画することに対して非管理職との協議が要求されていることと同じことです。従って、働く人やその代表との協議によって、目標に含めるべき事項とされたものについては、目標の中に含めなければなりません。

(次回に続く)

 

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