【ISO9001】9.1.1 (監視、測定、分析及び評価)一般
品質マネジメントシステムがうまく機能しているかを評価しよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「品質マネジメントシステムの結果を監視・測定・分析し、有効に機能しているかを評価しなさい」ということです。この項目は、監視、測定、分析、評価に関する一般的・概説的な要求をしている項目です。
「監視」「測定」とは何か?
それでは、ここで言われている「監視」「測定」「分析」「評価」とはどのようなことを意味するのでしょうか。「監視」と「測定」については規格で以下のように定義されています。
この項目では、監視・測定の対象・方法と時期、分析・評価の方法と時期を明確にすることで、監視、測定、分析、評価の仕組みを構築し、運用することが求められています。
- 「監視(monitoring)」:「システム、プロセス、製品、サービス又は活動の状況を確定すること」(3.11.3)
- 「測定(measurement)」:「値を確定するプロセス」(3.11.4)
また、「監視」の定義における注記2では、「監視は、通常、異なる段階又は異なる時間において行われる」とも書かれています。「異なる段階又は異なる時間」ということですので、定期・不定期又は連続的に対象を「見る」ということを意味します。また、測定というのは値を決める、ということですから、対象の何らかの特性を「測る」ということを意味します。対象を見る(監視する)際に、測る(測定する)こともありますので、ここでは「監視」と「測定」をワンセットで考え、測定は監視の一つの手法と考えると良いでしょう。
「分析」「評価」とは何か?
「分析」と「評価」は規格には定義がないので、辞書を見ると、以下のような定義がされています(”Oxford Advanced Learner’s Dictionary”)。
- 「分析(analyze)」:「あることを理解又は説明するために、特に部分に分けることによって、その性質や構造を調べること」
- 「評価(evaluate)」:「注意深く考えた上で、あることの量、価値、質などに関する意見を形成すること」
これを見ると、簡単にいうと、分析とは「調べること」であり、評価とは「意見を形成すること」ということができます。従って、この項目では、監視・測定によって得られた結果を「調べ(分析)」、それによって品質パフォーマンスや品質マネジメントシステムの有効性について、それらがどのような状況にあるのかについて「意見を形成する(評価)」ことが求められていると言えます。言い換えれば、いくら分析されていても、何も意見が形成されていないのであれば、それは評価されていないのと同じであり、そのような「分析のための分析」にならないようにすることが重要です。
監視、測定、分析、評価のプロセス?
上記のような理解のもとで、この項目では以下を明確にすることを要求しています。
- 「何を」監視、測定するか?
- 「どのように」監視、測定、分析、評価するか?
- 「いつ」監視、測定するか?
- 「いつ」分析、評価するか?
「何を」監視・測定するか、については、一般的には以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 製品・サービス:製品・サービスが要求事項を満たしているか?(製品・サービスの合否) 顧客がどのように受け止めているか?(顧客満足)
- プロセス:プロセスが要求事項通りに運用されているか、有効に機能しているか?
- システム:システムが要求事項通りに運用されているか、効に機能しているか?
これらを監視・測定するためには、例えば製品・サービスの合否であれば製品の最終検査やサービスの引渡し前の検証を行うことになるでしょうし、プロセスの適合性や有効性についてはプロセスパフォーマンス(不良率、納期順守率、稼働率等)の監視やプロセスの各種評価(パトロール、工程監査等)、システムの適合性や有効性については内部監査などで行うことができるでしょう。なお、顧客満足については次の9.1.2、内部監査については9.2でそれぞれより詳細に規定されています。
そして、監視、測定、分析、評価のための方法は、以下の事項を考慮して定めることが望ましいでしょう。
- 分析・評価の必要性に基づいて、監視・測定のタイミングを決定する。
- 監視・測定の結果が信頼でき、再現性があり、追跡可能であるようにする。
- 分析・評価が信頼でき、再現性があり、組織が傾向を報告できるようにする。
また、この項目では監視、測定、分析、評価で得られた結果の証拠として、適切な文書化した情報(記録)を保持することを要求しています。この結果は後で出てくる9.3のマネジメントレビューへのインプットにもなるので注意が必要です。