【ISO9001】8.7 不適合なアウトプットの管理
不適合な製品・サービスが誤って引き渡されないようにしよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「不適合な製品・サービスが誤って使用されたり引き渡されたりしないように、適切に処置・管理しなさい」ということです。要求事項は二部構成となっており、前半(8.7.1)は不適合なアウトプットに対する処置と管理について、後半(8.7.2)はその場合の文書化した情報(記録)の保持についてそれぞれ規定しています。
「アウトプット」とは何か?
まず、この項目で「不適合なアウトプット」と言われている「アウトプット」とはどのようなことを意味するかを見てみましょう。「アウトプット」は規格では以下のように定義されています。
「プロセスの結果」(ISO9000:2015, 3.7.5)
そして、「製品」と「サービス」はそれぞれ以下のように定義されています。
「製品」:「組織と顧客との間の処理・行為なしに生み出され得る、組織のアウトプット」(ISO9000:2015, 3.7.6)
「サービス」:「組織と顧客との間で必ず実行される、少なくとも一つの活動を伴う組織のアウトプット」(ISO9000:2015, 3.7.7)
ここからわかるように、「製品」も「サービス」も「アウトプット」の一類型ということが言えます。そして、アウトプットが製品かサービスのどちらであるかは、アウトプットが持っている特性のうちどちらが優位かによって左右されます(ISO9000:2015, 3.7.5注記)。例えば、お店で購入したハンバーガーは製品ですが、レストランでハンバーガーの注文を受け、提供することはサービスの一部です。
なお、「アウトプット」は「プロセスの結果」ですので、最終の製品やサービスだけでなく、途中段階のもの(例えば、購買品や外注加工品、仕掛品等)もこれに含まれ得る点にも注意が必要です。
不適合な製品・サービスが発生した時、どうしたら良いか?
前半の8.7.1の冒頭では、この項目の目的が「要求事項に適合していないアウトプットが誤って使用されたり引き渡されたりすることを防ぐため」であることが示されています。そしてその目的のために、不適合なアウトプット(製品・サービス)を処理する方法として以下のようなものが具体的に示されています。
- 修正
- 製品・サービスの分離、散逸防止、返却、提供停止
- 顧客への通知
- 特別採用による受入の正式な許可の取得
つまり、適合した製品・サービスと混在しないように分離・散逸防止し、サービスの場合はその提供を停止し、直せるものは直し(修正)、返却すべきものは返却します。また、顧客に通知する必要がある場合は通知します。そして、適合していなくても特別に引き渡しても良い場合は、その正式な許可を得る必要があります(特別採用)。
なお、これらの処理は、不適合の性質やその不適合が製品・サービスの適合性に対して持つ影響に対して適切なものでなければなりません。例えば、多くの人命に関わる非常に重要な部品に不適合があった場合、その不適合の影響は非常に大きい可能性がありますので、安易に直して引き渡したり特別に引き渡しを許可したりする、ということはすべきではないでしょう。ここにも「リスクに基づく考え方」が反映されています。
どのような記録を残す必要があるか?
8.7.2では、不適合なアウトプットへの対応に関して、文書化した情報(記録)を保持することが要求されています。そこには以下の内容を含む必要があります。
- 不適合の内容
- 取られた処置の内容
- 取得された特別採用の内容
- 不適合に関する処置を決定した権限者の特定
ここでは特に、特別採用があった場合、その内容を記録しなければならないことに注意が必要です。特別採用とは、本来は不適合のため引き渡せないものを、特別に許可を得て引き渡す、というイレギュラーな処理ですから、それを実施する場合にはそれ相応のリスクが考えられます。従って、そのようなリスクに備えるためにも、そのようなイレギュラーな処理が適切な判断によって行われたことを示すために、適切な記録を保持しておく必要があります。