【ISO45001】8.2 緊急事態への準備及び対応(2)

緊急事態に備え、対応しよう

(前回の続き)

緊急事態の準備・対応のプロセス

それでは、6.1.2.1で特定された緊急事態に準備・対応するプロセスにはどのようなことが含まれるのでしょうか。この項目では以下のようなことが挙げられています。

  • 緊急事態への計画的な対応の確立(応急処置の用意を含む)(a)
    • 策定に当たって、必要に応じて利害関係者の関与を得る(g)
  • 計画的な対応に関する教育訓練をする(b)
  • 計画的な対応をする能力について、定期的にテスト・訓練を行う(c)
  • テスト後・緊急事態発生後を含めて、パフォーマンスを評価し、必要に応じて計画的な対応を改訂する(d)

緊急事態への準備・対応の流れ

 

また附属書A.8.2では、緊急事態への準備の計画は、「通常の営業時間の内でも外でも発生する、自然の、技術的な及び人為的な事象を含み得る」と説明されています。

 

緊急事態に関しては内部・外部に対する適切な情報提供やコミュニケーションも重要であり、それについても以下のように規定されています。

  • 全ての働く人に、自らの義務と責任に関する情報を伝達し、提供する(e)
  • 請負者、来訪者、緊急時対応サービス、政府機関、必要に応じて地域社会に対して、関連情報を伝達する(f)

緊急事態への計画的な対応

想定される緊急事態への対応においては、そもそもそれが発生しないようにするための予防的対策と(例 発火源の除去・削減)、それが発生してしまったときにそれによる被害を最小限に食い止めるための事後的な対策(例 消火活動や緊急避難)があります。

 

緊急事態が発生したときは、計画したプロセスに従って対応し、被害を最小限に抑えるための処置を実施する必要があります。いくらあらかじめプロセスを明確にしていても、いざというときにそれを実施することができなければ意味がないため、そのようなプロセスを実際に実施することができるかどうかを定期的にテストしたり訓練したりすることが必要です。その際には、できるだけ想定した緊急事態の実際の状況に即して実施し、そのプロセスが本当に計画した通りに実行できるかどうかを検証することが重要でしょう。さらに、それらのテスト実施後や緊急事態発生後には、計画した対応のプロセスのパフォーマンスを評価し、必要に応じて改訂しなければなりません。

 

なお、5.4で要求されているように、管理方法やそれらの効果的な実施・活用を決定する際には、非管理者が参加しなければならないとされており、そこでは8.2も参照されていることから、この項目で要求されている緊急事態に対する対応策についてもその決定には非管理者の参加が要求されていることに注意が必要です。

 

さらに、緊急事態への準備・対応のプロセスや計画は「文書化した情報」として維持、保持することも要求されています。具体的には、「緊急事態対応手順」のような文書として「維持」したり、「緊急事態訓練記録」などの記録として「保持」したりすることになるでしょう(文書化した情報の「維持」と「保持」の違いについては、【コラム1】「文書」と「記録」はどう違う?~文書化した情報の「維持」と「保持」を参照してください)。