【ISO45001】8.1.4 調達

外部から製品やサービスを調達するプロセスを管理しよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「労働安全衛生リスクを低減させるために外部から製品やサービスを調達するプロセスを管理しなさいということです。そして、この項目は8.1.4.1~8.1.4.3の三部構成になっており、それぞれ以下のようなことが要求されています。

  • 8.1.4.1:調達を管理するプロセスを管理する
  • 8.1.4.2:請負者に関連するリスクを管理する
  • 8.1.4.3:外部委託したプロセスを管理する

調達プロセスを管理する

8.1.4.1は、調達に関する一般的な要求として、「調達を管理するプロセス」を確立、実施、維持することを規定しています。組織は、製品や有害な材料・物質、原材料、設備、サービスを外部から調達することが多々あると思われますが、そのような場合、それに付随する危険源を特定し、評価し、除去し、それによる労働安全衛生リスクを低減するために、調達プロセスを管理する必要があります。そして、附属書A.8.1.4.1にあるように、これらが職場に導入される「前に」実施することが重要です。

 

附属書A.8.1.4.1では、設備や施設、材料に関して、それらが組織の働く人によって安全に使用されるようにするために、以下のようなことを通じて検証することが推奨されています。

  • 設備を仕様書に従って搬入し、意図したとおりに機能するかどうかを確認するための試験を行う
  • 設計どおりに機能するかどうかを確認するt目に施設に試運転を行う
  • 材料を仕様書に従って搬入する
  • 使用法に関する要求事項、予防方策やその他の保護方策を伝達し、使用できるようになっている

 

また、先の5.4で見たように、この「外部委託、調達及び請負者に適用する管理」を決定するプロセスでは、非管理職と協議が行われるようになっていなければならないことにも注意が必要です。

請負者に関連するリスクを管理する

8.1.4.2では、請負者に関連するリスクを管理するために、調達プロセスを請負者と調整することが要求されています。ここで言う「請負者」とはISO45001:2018で以下のように定義されています。

「合意された仕様及び契約条件に従い、組織にサービスを提供する外部の組織」(3.7)

 

このような請負者が職場にいることで生じる関係性として以下のようなものが挙げられ、それに起因するリスクを適切に管理することが要求されています。

  1. 組織に影響を与える請負者の活動・業務
  2. 請負者の働く人に影響を与える組織の活動・業務
  3. 職場のその他の利害関係者に影響を与える請負者の活動・業務

 

これは図で示すと以下のようになるでしょう。

請負者に関連するリスク

つまりここで挙げられたa)~c)のような関係における危険源を特定し、関連するリスクを評価、管理することが要求されているわけです。

 

b)は、組織の活動が請負者の働く人の安全や健康に悪影響がないようにしなければならない、ということで、これは組織自身の活動が職場内の請負者の安全や健康に悪影響を及ぼさないようにしなければならない、ということです。請負者の働く人の安全に対する責任は請負者自身が持っていますが、組織の名の下で請負者が活動・業務を行う場合、請負者の人の安全や健康に悪影響が出てしまったら組織自身の評判にも影響します。従って、組織は「請負者の安全や健康は自分たちには関係ない」ということは当然言えず、自らをそのようなレピュテーションリスクから守る上でも適切に管理することが重要でしょう。

 

a)及びc)は「請負者の活動・業務」が組織の人や職場内の利害関係者の安全や健康に悪影響を及ぼすことがないように管理しなければならないことを要求しています。附属書A.8.1.4.2にあるように、「請負者の活動・業務」には、保守、建設、運用、警備、清掃といった様々なものがあり、またコンサルタント、事務、経理やその他の専門的なものもあります。そしてこれらの活動は、請負者の特殊な知識や技能、方法、手段によって行われることも多いため、組織だけではそれに起因するリスクを適切に把握し、管理することが難しい場合もあるでしょう。そのため、ここでは「調達プロセスを請負者と調整」することが要求されているということが言えます(附属書A.8.1.4.2参照)。

 

また、組織は請負者が組織の労働安全衛生マネジメントシステムの要求事項を守るようにする必要があり、さらに請負者を選定するに当たっても、労働安全衛生に関する基準を定めて適用することが求められています。

外部委託したプロセスの管理

8.1.4.3では、外部委託した機能やプロセスを管理することが要求されています。「外部委託する」という言葉は、ISO45001:2018では以下のように定義されています。

「ある組織の機能又はプロセスの一部を外部の組織が実施するという取決めを行う」(3.29)

 

外部委託した機能やプロセスに対してどのような方法や程度で管理するかについては、組織がその労働安全衛生マネジメントシステムの中で明確にしなければなりませんが、附属書A.8.1.4.3では、その管理の方法や程度を決めるに当たって組織が考慮すべき要因を以下のように規定しています。

  • 組織の労働安全衛生マネジメントシステム要求事項を満たすための外部組織の能力
  • 適切な管理を決めるため、又は管理の妥当性を評価するための、組織の技術的な力量
  • 労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に対して外部委託したプロセスや機能が与える潜在的な影響
  • 外部委託したプロセスや機能が共有される程度
  • 調達プロセスを適用することを通して必要な管理を達成する組織の能力
  • 改善の機会

 

つまり、外部委託先の能力・力量や外部委託された活動がもつリスクなどによって、組織が管理する方法や程度は変わってくる、ということであり、これは言い換えると外部委託に関わるリスクに基づいて決定する、ということになるでしょう。