【ISO45001】7.4 コミュニケーション(2)

必要な人に、必要なことが伝達されるようにしよう

(前回の続き)

「何について」コミュニケーションするか?

「何を」コミュニケーションするかを検討する際には、この規格で要求されている以下のような事項について考慮することが重要です。

  • 有効な労働安全衛生マネジメントシステムと、労働安全衛生マネジメントシステム要求事項への適合の重要性(5.1)
  • 労働安全衛生方針(5.2)
  • 組織内の役割、責任、権限(5.3)
  • マネジメントシステムのパフォーマンス(トップに対して)(5.3)
  • 労働安全衛生目標(6.2.1)
  • 危険源、労働安全衛生リスクと決定した取組み(7.3)
  • 生命や健康に切迫して重大な危険があると考えられる状況から逃れることができることと、そうした場合に不当な結果から保護される取決め(7.3)
  • 緊急事態の準備・対応に関する義務・責任に関する情報(全ての働く人に対して)(8.2)
  • 緊急事態の準備・対応に関する関連情報(請負者、来訪者、緊急時対応サービス、政府機関、地域社会に対して)(8.2)
  • モニタリング・測定の結果(9.1)
  • 利害関係者との関連するコミュニケーション(9.3)
  • マネジメントレビューの関連するアウトプット(働く人・働く人の代表に対して)(9.3)
  • インシデントや不適合の性質、とった処置、処置の有効性を含めた全ての対策、是正処置の結果(関係する働く人・働く人の代表、その他の関係する利害関係者に対して)(10.2)
  • 継続的改善の関連する結果(働く人・働く人の代表に対して)(10.3)

「どのように」コミュニケーションするか?

「どのように」コミュニケーションするかに関しては、様々な方法があり得ます。一般的には会議や文書、掲示、メールといった方法が考えられますが、情報技術の進歩に応じてSNSやオンライン会議システム、動画配信サービスといったものも(当然それらに関連するリスクも考慮した上で)活用できるでしょう。また、組織のダイバーシティ(多様性)の重要性が高まる中、情報を受け取る人の多様性を考慮してコミュニケーションの方法を検討することも重要です。例えば、外国人労働者に対してはその言語能力に応じて当然ながら理解できる外国語での伝達やイラスト・画像等による視覚的な手段による伝達が必要な場合があるでしょうし、障害がある人に対してはそれに応じた方法でコミュニケーションすることが必要なことは言うまでもありません。

なお、5.4で要求されているように、コミュニケーションする必要がある情報は何か、そしてどのような方法でコミュニケーションするかを決定する際には、非管理者が参加しなければならないことにも注意する必要があります。

内部コミュニケーション(7.4.2

7.4.2では内部コミュニケーションに関する要求事項が規定されています。組織の労働安全衛生マネジメントシステムが有効に機能するためには、内部のコミュニケーションがトップダウンだけでなく、ボトムアップや部門の垣根を越えた水平方向においても十分に行われるようにすることが重要です。

b)では、内部コミュニケーションのプロセスによって、働く人が継続的改善に寄与できるようにすることが要求されています。安全衛生委員会等に働く人が参加することを通じて労働安全衛生マネジメントシステムのパフォーマンスを改善することに寄与すること等が例として挙げられるでしょう。

内部コミュニケーションの方法は、7.3で既に述べたように、組織の規模や複雑さによって大きく異なります。通常、規模の大きな組織や、物理的な場所が一ヶ所ではなく広範囲にわたっているような組織の場合は、そうでない組織に比べてより綿密に計画されたコミュニケーションのプロセスが必要になるでしょう。ここで、プロセスの文書化は特に要求されていませんが、重要なことは必要な程度内部コミュニケーションのプロセスが定められ、その結果、必要な事項が必要な人に十分理解されている状態にある、ということです。従って、内部監査や外部審査においては、組織の人々に対して彼らが理解しているべき事項(労働安全衛生方針や目標、危険源や労働安全衛生リスク、労働安全衛生パフォーマンス、各自の組織における役割や責任権限等)が理解されているかを実際にインタビューすることで確認し、それがどのようなプロセスによって行われているかを確認することにより、本項の要求事項が満たされているかを判断することができます。

外部コミュニケーション(7.4.3

7.4.3では、外部コミュニケーションに関する要求事項が規定されています。この場合、「外部」とは外部の利害関係者を意味すると考えられ、具体的には顧客や親会社、購買先や外部委託先、関係官庁、規制当局、業界団体、地域住民等があり得ます(これは、4.2でどのような「関連する利害関係者」があると特定したかによって異なります)。従って、外部のコミュニケーションにおいても、7.4.1のa)〜d)に挙げられた事項を含めてそのプロセスを明確にし、必要なコミュニケーションがとられるようにしなければならなりません。また、外部コミュニケーションにおいては特に法的及びその他の要求事項が関わる可能性が高いため、この点にも注意が必要であることは前述の通りです。