【ISO14001】8.1 運用の計画及び管理(2)

環境マネジメントシステムの運用のプロセスを計画し、管理しよう

(前回の続き)

 

アウトソースの管理

外部委託(アウトソース)したプロセスに対する管理についてもここで規定されています。「外部委託(アウトソース)する」ということは規格では以下のように定義されています。

「ある組織の機能又はプロセスの一部を外部の組織が実施するという取決めを行う」(ISO14001:2015, 3.3.4)

 

また、その注記には「外部委託した機能又はプロセスはマネジメントシステムの適用範囲内にあるが、外部の組織はマネジメントシステムの適用範囲の外にある」とあることに注意が必要です。これは要するに、外部委託したプロセスについても環境マネジメントシステムの管理の範囲に含まれる、ということで、「外部委託しているから自分たちとは関係ない」として丸投げすることは許容されず、外部委託したプロセスが要求事項に適合することに対する責任を組織が有している、ということです(ISO14001:2015, 附属書A.8.1参照)。但し、外部委託したプロセスを実施する「組織」は、自分たちとは別の組織であるので、当然ながら自分たちの環境マネジメントシステムの適用範囲には含まれません。

 

これも、外部委託関係が複雑化する昨今、環境関連に限らず多くの問題が外部委託先の管理の不十分さに起因することが多いことを考えれば当然の要求であり、マネジメントシステムの共通的な要求事項として附属書SLで規定されているものです。

 

外部委託したプロセスや、外部提供者から提供される製品・サービスに対しては、組織が直接的に管理する場合もあれば、限定された影響を与えるのみである場合もあります。この管理の方式や程度を決定する際には、以下のようなことを考慮すべきでしょう(ISO14001:2015, 附属書A.8.1参照)。

  • 環境側面と、それに伴う環境影響
  • 製品の製造やサービスの提供に関連するリスク・機会
  • 組織の順守義務

 

「ライフサイクルの視点」の考慮

更にこの項目で重要なことは、運用にあたって「ライフサイクルの視点」が考慮されなければならないことが規定されている点です。「ライフサイクルの視点」は6.1.2「環境側面」でも言及されていましたが、そちらが計画面での考慮だとすると、ここは実施面での考慮ということができます。

 

「ライフサイクルの視点」

ここでは、設計・開発、調達から輸送・配送(提供)、使用、使用後の処理、最終処分に至る具体的なライフサイクルの段階が挙げられ、それらに関連して該当する場合は必要な運用を実施することが要求されています。実際には、ここでの運用すべき事項は6.1.2で明確にされた「環境側面」の中で特定され、計画されたものとなるでしょう。例えば、設計・開発プロセスに関連して、提供する製品・サービスの環境負荷物質の低減やエネルギー効率の向上が著しい環境側面として特定されていたり、調達プロセスに関連して、適切な環境管理を行っている外部提供者を選定することが著しい環境側面に特定されているのであれば、それらを実際に実現するために具体的な基準を設けて運用する必要があります。

 

更に、ライフサイクルの視点を考慮して環境側面を考えた場合、組織の著しい環境影響の中には、製品・サービスの輸送、配送(提供)、使用、使用後の処理又は最終処分の中で発生し得るものが特定されることもあるでしょう。そのような場合は、関連する利害関係者(輸送業者、ユーザー、廃棄業者等)に適切な情報を提供することによって、これらの段階での有害な環境影響を防止・緩和することができるでしょう(ISO14001:2015, 附属書A.8.1参照)。

書籍:「ISO14001:2015 完全理解」

今回初めての大改定となったISO14001:2015。
その背景には、めまぐるしく変化する社会情勢や、
その影響が無視できないほど大きくなりつつある地球環境の変化があります。
本書では各要求事項をその意図を含めて解説することで、
用語にとらわれない、要求事項が組織に求める「本質」を明らかにしていきます。