【ISO14001】7.2 力量(2)

必要な力量をもった人が業務を行えるようにしよう

(前回の続き)

 

必要な力量を持った人をどのように割り当てるか?

このようにして明確にされた「必要な力量」を持った人が、その業務に従事するようにすることがb)で要求されています。この場合、その人が必要な力量を持っているかどうかは、その人がどのような教育や訓練を受けているか、どのような経験を持っているか、といったことを元に判断することになります。このとき、必要に応じてその力量を持っていることを示す証拠を文書化した情報、つまり記録として保持しなければなりませんが、これは特に法規制や顧客要求などの理由で必要な場合は注意が必要です(例 特別管理産業廃棄物の管理責任者、顧客が要求する認定資格など)。

 

必要な力量をどのようにして持たせるか?

そして、必要な力量をもつためにどのような教育訓練が必要かを明確にし(c)、必要な力量がないと判断された場合には何らかの手段によって必要な力量を持てるようにする必要があります(d)。この、力量を持てるようにする手段の代表的なものが教育訓練ですが、必ずしもそれに限定されるわけではなく、例えば「現在雇用している人々に対する指導の実施、配置転換の実施」、更には「力量を備えた人々の雇用、そうした人々との契約締結」等があり得ることが注記に記載されています。

 

つまり、組織のその活動を実施(しようと)する従業員に対して教育訓練を実施しても必要な力量を持つことができない(あるいは難しい)のであれば、社内での配置転換や、場合によっては既に必要な力量を持った人を新たに雇用したり契約したりすることが必要になる場合もあることを意味しています。またこの注記には記載がありませんが、その活動をより安全に行うことができるように方法を変更することで、必要な力量のレベルを低くし、結果として現在の人がその力量を持てるようにすることも考えられます。

 

力量が持てたかをどのように評価するか?

更に、力量を持たせるために教育訓練やその他の処置を実施した結果、それが目的に対して十分であったか、つまり「処置の有効性」を何らかの形で評価する必要もあります(d)。この「有効性を評価する」方法について規格は何も示していないので、組織が決めることになります。

 

多くの組織でこれに対応するために理解度テストのようなものを実施することが考えられるかもしれませんが、ここでの有効性評価の方法として理解度テストをすることだけで本当に十分かをよく考える必要があります。なぜなら、「有効性」とは当初の目的を達成しているかどうかで判断すべきであり、この場合の「当初の目的」とは「必要な力量を持たせること」であるからです。そして「力量」とは後記の定義にもあるように「意図した結果を達成するために知識及び技能を適用する能力」であって、単に頭で知識として理解したことにとどまらないからです。

 

最終的には教育訓練等によって得られた知識や技能を「適用する能力」、つまり、その活動を問題なく実施できることが要求されているのであり、そうであれば単に理解度テストによって頭で「分かった」かどうかを評価したところで、実際に「できる」かどうかを評価したことにはなりません。だとすれば、この「有効性の評価」は、実際に活動を行ってもらった結果を評価したり、実際に活動を行わせることができない場合は何らかのシミュレーションのような形で実施した結果を評価したりするといった方法がより適切でしょう。

(教育訓練の有効性評価については、以下の関連記事でより詳細に解説しています↓)

https://j-vac.co.jpquestions_training_effectiveness/

 

7.2の大きな流れ

 

 

書籍:「ISO14001:2015 完全理解」

今回初めての大改定となったISO14001:2015。
その背景には、めまぐるしく変化する社会情勢や、
その影響が無視できないほど大きくなりつつある地球環境の変化があります。
本書では各要求事項をその意図を含めて解説することで、
用語にとらわれない、要求事項が組織に求める「本質」を明らかにしていきます。