【コラム4】「考慮する」と「考慮に入れる」はどう違う? ~規格の文言に隠された意図

コラム2」では、ISO独特の用語への対処の仕方をお話ししましたが、ここでは、そのようなISOマネジメントシステム規格を読む際に注意してほしい一つの例をご紹介します。「コラム1」でも、文書化した情報の「維持」と「保持」についてお話しし、それも注意を要する代表的な例なのですが、ここではもう一つ別の例として、「考慮する(consider)」と「考慮に入れる(take into account)」をご紹介したいと思います。

これらの言葉、私たちにとっては一見同じように見えますし、英語圏の人たちも日常的にはそれほど厳密な意味の違いを意識して使っているわけではないと思いますが、ISOマネジメントシステム規格で使用される場合には、これらの用語は以下のように明確に使い分けられています。

  • 「考慮する(consider)」:「その事項について考える必要があるが除外することができる」こと
  • 「考慮に入れる(take into account)」は「その事項について考える必要があり、かつ、除外できない」こと

言い替えると、「考慮に入れる」の方が「考慮する」よりも強い意味を持っている、ということが言えます。上記の説明は、ISO14001:2015の附属書A.3に書かれており、ISO9001:2015には書かれていないのですが、ISO9001でも同様に考えて差し支えありません(似たような説明は労働安全衛生マネジメントシステムのISO45001:2018の附属書A.3にも記載されています)。

このような背景を理解して規格を読むと、規格の要求事項の微妙なニュアンスの違いを読み取ることができると思いますので、ぜひ意識してみてください。

書籍:「ISO9001:2015 完全理解」

2000年以来の大改定と言われるISO9001:2015。
今回の大改定の背景には、めまぐるしく変化する社会情勢があります。
本書では各要求事項をその意図を含めて解説することで、用語にとらわれない、要求事項が組織に求める「本質」を明らかにしていきます。
単なる逐条解説に終わらない、ISO9001:2015を芯から理解できる1冊です。