ISO独特の「用語」とどう付き合うか? ~コラム2:用語の「定義」の重要性

ISOマネジメントシステム規格を読む際に多くの人の頭を悩ませるのが、その言葉の難しさ、分かりにくさでしょう。それは、ISO規格の原文が英語で書かれ、私たち日本人はそれが日本語に翻訳されたものを読まなければならず、その日本語訳も、日本語としての自然さよりも正確性を優先して、「意訳」ではなく「直訳」になっていることに原因があると思います。そして、マネジメントシステム規格の目的として、どのような組織にも適用できる「普遍的な」ものを目指しているため、その言葉遣いもどうしても「個別具体的」なものではなく「抽象的」なものにならざるを得ません。規格を読むにはこの「分かりにくい日本語」で書かれた文章と付き合うしかないのですが、それでも読む際には一つの「コツ」のようなものがあります。それは、そこで使われている用語の「定義」を明確にする、ということです。

ISO9001規格には、「リスク」「機会」「プロセス」「コミットメント」「力量」「認識」「設計・開発」「マネジメントレビュー」「不適合」「修正」「是正処置」「パフォーマンス」など、独特の用語が多く使われています(ISO14001規格では「環境側面」が代表例でしょう)。これらの言葉は、一見して推測できるものもあれば、そうでないものもあります。このような独特の用語(一見して意味が何となく分かる用語は、それがISO規格独特の用語ということに気づきづらいかもしれませんが)については、まずは用語の定義を規定したISO9000:2015規格でその定義を調べることが重要です(ISO14001規格では、規格の箇条3にISO14001独自の用語の定義が説明されています)。特に「設計・開発」などは一見してある程度意味が想定できる言葉ではありますが、ISO9001:2015では独自に定義された用語として使用されていますので、しっかり定義を理解した上で自分たちの組織ではどのように考えたら良いかを検討することが重要です。

ただ、上に挙げた用語の中でも「機会」や「コミットメント」、「認識」といった言葉はISO9000:2015にも定義がありません(日本人にとっては特に「コミットメント」という言葉は分かりにくい言葉ですが、英語圏の人にとってはさほど特別な言葉ではないということもあり、定義が与えられていないのでしょう)。そのような場合、規格作成者は「辞書を調べなさい」と言っています。その場合、日本語の辞書を引くのも良いのですが、日本語と英語が異なる言語である限り、原文と訳語の意味が完全に一致するということはありませんので、できれば英語の原文を英語辞典で調べる方が良いでしょう(つまり、「機会」なら”opportunity”、「コミットメント」なら”commitment”、「認識」なら”awareness”を英語辞典で調べる、ということです)。これは日本人の私たちにはなかなかハードルの高いことかもしれませんが、それによって規格に書かれた文章の細かいニュアンスを把握し、規格を深く理解するのにきっと役立つはずです。