【ISO45001】9.2 内部監査(2)

労働安全衛生マネジメントシステムの適合性と有効性を自分たちでチェックしよう

(前回の続き)

「内部監査プログラム」とは何か

9.2.1では、内部監査を「計画された間隔(planned intervals)」で実施することが要求されています。これは、「毎年2回、4月と10月に実施する」とか、「毎年1回、10月に実施する」と画一的に実施時期を決めることを意図したものではなく、次の9.2.2で要求しているように、関係するプロセスの重要性や以前の監査結果を考慮して監査プログラムを計画することを意図しています。

 

つまり、例えば、労働安全衛生に対して大きな影響を持つプロセス(例 製造業における製造プロセスや建設業における施工プロセス等)の監査の頻度を高くしたり、より重要性の低いプロセスや以前の監査で問題がほとんど見られないプロセス等についてはより低い頻度にしたりして、リスクに応じて柔軟に計画を立てて内部監査を実施する、ということです。外部審査でよく指摘される事項の一つの項目が、この監査プログラムの作成に当たって必要な事項が考慮されていない、というものがありますので、以上のことを十分理解した上で監査プログラムを作成することを忘れないようにすることが必要です。

 

<参考:監査プログラム立案の際に考慮すべき事項の例>

  • 重要性
    • 組織の労働安全衛生に対して特に重要な意味を持つプロセスはどれか?
    • 過去に事故が発生したり、インシデントが多く発生したりしているプロセスはないか?
  • 以前の監査結果
    • 内部監査や外部監査(顧客監査、審査機関による監査)で多くの問題が指摘されているプロセスはないか?
  • その他
    • 経営トップからの特別な指示はないか?

 

 

内部監査員をどのように選定するか

内部監査のプログラムを策定したら、次に内部監査を実施する内部監査員を割り当てる必要があります。内部監査員に必要な力量については、規格は特に明確に言及していませんので、組織が決める必要がありますが、当然ながら誰でも内部監査ができるわけではありません。一般的に、内部監査を行うに当たっては、以下のような知識やスキルが必要になってくるでしょう。

  • 監査しようとする規格の要求事項の知識
  • 監査しようとする領域(プロセス)に関する技術的な知識(法規制に関する知識を含む)
  • 監査チェックリストの作成、インタビュー、報告書作成等に関するスキル

 

また、どの監査員にどの領域(プロセス)を監査してもらうかを決める際には、「監査プロセスの客観性及び公平性を確保するために、監査員を選定」しなければならない、ということが要求されています。そしてこれは、ISO45001:2018の「監査」の定義(3.32)にはありませんが、ISO9000:2015の「監査」の定義(3.13.1)の注記3にある「独立性は、監査対象の活動に対する責任を負っていないことで実証することができる」という説明が参考になるでしょう。

 

これは、監査対象に責任を有する人が監査をした場合、自らの責任範囲の活動における問題に気づきにくかったり、もしくは気づいても意図的に見逃したりといったことを防ぐことを目的としたものです。公平性や客観性を確保するために、例えば監査対象とは別の組織や別の部署の人に監査してもらわなければいけないということでは必ずしもありませんが、通常は監査対象の活動を実施する部門とは別の部門の人が監査することで公平性・客観性を確保することが多いでしょう。しかし、これは小さな組織においては必ずしも容易ではないと思われます。そのような場合は、規格の意図を汲み、できるだけ客観的な立場で見られる人を選定したり、外部の代理人に監査を依頼したりすることも可能でしょう。

 

内部監査をどのようにフォローアップするか

監査を実施した後は、監査において懸念事項(不適合や観察事項)を指摘された部署の責任者は、それらに対して必要な修正(検出された不適合を除去するための処置)や是正処置(検出された不適合の再発を防止するための処置)を遅滞なく実施する必要があります。また、是正処置をとった場合は、その有効性を確認するためにフォローアップを行なうことが必要です。

 

このフォローアップは、発見された不適合の重大性や、それに対する処置の緊急性によっていつ行うかは変わってくるでしょう。重大な不適合や、処置の緊急性が求められるような不適合に対しては、そのフォローアップだけを目的として臨時に確認を行うこともあるでしょうし、そうでない場合は次回の内部監査で行う、ということもあるでしょう。