【ISO14001】6.1.2 環境側面(2)

環境上重要なリスクを特定しよう

(前回の続き)

「非通常・緊急事態」と「変更」の考慮

環境側面の洗い出しにおいては、「非通常の状況及び緊急事態の考慮」も考慮することが求められています。環境への負の影響は多くの場合このような非通常や緊急事態で甚大になる可能性が高いため、これらの「通常」ではない状況について特に注意して環境側面を特定する必要があります。ここでは「非通常」の状況がどのような場合かが分かりにくいかもしれませんが、これは例えば工場の設備の保守や清掃といった通常の操業状態ではない状況と考えると良いでしょう。また、前回「ライフサイクルの視点」について説明しましたが、ここでも自社の活動における「非通常」や「緊急事態」だけではなく、ライフサイクルの視点から見た「非通常」や「緊急事態」も考慮することも重要でしょう(例 「非通常」や「緊急事態」の際の原材料調達、輸送、使用、廃棄等に対する配慮)。

 

さらに、環境側面の特定においては「変更」を適切に考慮することが要求されています。これも、「変更」に伴って環境側面が変化し、それを見逃して負の環境影響が発生してしまうことを避けるためですが、審査の場面でもこのような「変更」が適切に環境側面の見直しにつなげられていないという不適合が指摘されるケースが見られます。従って、新規や変更された活動や製品・サービスに関して遅滞なく環境側面、環境影響の見直しを行うことができるようなプロセスになっていることが非常に重要です。

 

なお、「変更」に伴う環境側面の見直しにおいては、見直しの「時期」も重要な要素です。なぜなら、環境側面の特定は、意図しない悪い影響が出ることがないようにするために行うことが特に重要であり、全てが確定してしまった後で環境側面の見直しを行っても悪い環境影響を低減するには手遅れになってしまう場合があり、それを避けるためには十分に早い段階で環境側面・環境影響を検討することが重要です(例 新規設備の導入後ではなく選定前に適切な環境側面・環境影響の検討を行うことで、最大限の環境負荷低減を図る)。

「著しい環境側面」の特定

ステップ2の「著しい環境側面の決定」では、特に「設定した基準を用いて」著しい環境側面を決定することが要求されている点に注意が必要です。この点に関しては、ISO14001:2015の付属書A.6.1.2で、著しい環境側面を決定する方法や基準について、以下のように説明されています。

  • 著しい環境側面を決定する方法は一つだけではない。
  • 著しい環境側面を決定するのに用いる方法・基準は、矛盾なく一貫した結果を出せるものであることが望ましい。
  • 著しい環境側面を決定するための基準には、環境に関する基準のみではなく、その他の基準(法的要求事項や利害関係者の関心事といった組織の課題を含む)を用いることもできる。
  • 環境に関する基準は、環境側面を評価するための主要で最低限の基準である。従って、その他の基準は、環境に関する基準に基づいて評価された結果を過小評価するために用いてはならない。

 

ここでは特に、著しい環境側面の決定に当たって、「環境に関する基準」に加えて「その他の基準」もありうることに言及されている点に注意すべきでしょう。ここで「環境に関する基準」とは、環境側面や環境影響の性質や規模、頻度、影響度等に関わる基準であり、例えば使用材料の希少性や有害性、使用エネルギーの量、排出物質の量や有害性といったことに関わるものです。著しい環境側面を決定する際には、当然これらの「環境に関する基準」に基づいて評価が行われるべきです。しかしながら、環境に対する影響としては相対的に低いと評価された場合でも、組織の状況や利害関係者のニーズ・期待を考慮した結果、著しい環境側面と判断すべき場合があり得ます(例 エネルギーの使用量はそれほど大きくないが、昨今の温暖化防止の国家的な取り組みに対する配慮から電気の使用を著しい環境側面に挙げる、廃棄物の排出量はそれほど多くないが、地域のゴミ削減の期待に配慮して廃棄物の排出を著しい環境側面に挙げる等)(下図参照)。

 

このような点に関する基準がここで言う「その他の基準」であり、このような基準を適切に考慮することで、組織の環境マネジメントシステムを、より組織の状況に合致した、戦略的なものにすることができるでしょう。

 

「著しい環境側面」決定の基準

(著しい環境側面については、以下の関連記事でもより詳細に解説しています↓)

【ISO質問箱】(ISO14001)「著しい環境側面」って結局どういうこと?

 

何を文書化しなければならないか?

この項目の最後には、以下の3つに関して文書化した情報を維持することが要求されています。

  • 環境側面と、それに伴う環境影響
  • 著しい環境側面を決定するために用いた基準
  • 著しい環境側面

 

このうち、特に「著しい環境側面を決定するために用いた基準」の文書化については、2015年版で初めて要求されるようになった事項であり、十分な注意が必要です。

 

著しい環境側面の他の要求事項との関係

「著しい環境側面」は、組織の環境マネジメントシステムが取り組む対象となる重要な要素ですので、適切かつ十分に検討を行う必要があります。ここで特定された「著しい環境側面(影響)」は規格の以下のような要求事項に関連しています。

  • 組織の種々の階層及び機能に著しい環境側面を伝達する(6.1.2)
  • 著しい環境側面への取組みを計画する(6.1.4)
  • 環境目標の確立の際に著しい環境側面を考慮する(6.2.1)
  • 組織の管理下で働く人々が自分の業務に関係する著しい環境側面の認識を持つ(7.3)
  • 製品及びサービスの輸送又は配送(提供)、使用、使用後の処理及び最終処分に伴う潜在的な著しい環境影響に関する情報を提供する必要性について考慮する(8.1)
  • マネジメントレビューで著しい環境側面の変化を考慮する(9.3)

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講師の丁寧な解説により、2015年改定最大の変更点である4.1項「組織の状況」と6.1項「リスク及び機会」の意図を理解することができ、ワークに書き込みながら考えることで、自組織が取り組むべきリスクと機会を絞込み、対応の計画につなげることができます。