【ISO14001】5.2 環境方針

組織の目指すべき方向性を決めよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「トップマネジメントは、環境方針を通じて、環境に関して組織が目指すべき方向性を示さなければならない」ということです。この項目は、更に、確立すべき方針の「内容」に関する前半部分と、確立された方針の「運用」に関する後半部分に分かれています。

 

「環境方針」とは?

それでは、まず「環境方針」とは何かを見てみましょう。ISO14001:2015では以下のように定義されています。

「トップマネジメントによって正式に表明された、環境パフォーマンスに関する、組織の意図及び方向付け」(3.1.3)

 

つまり、環境方針とはトップマネジメントが正式に表明するものであり、環境に関してどのような方向性を目指すのかを示したものである、ということです。

環境方針の「内容」

それでは、環境方針はどのような内容のものであるべきなのでしょうか。それが書かれているのが、前半部分です。ここでは、環境方針に含むべき内容として以下の6つが規定されています。

  1. 組織の目的、活動、製品・サービスの性質、規模、状況に対して適切である
  2. 環境目標の設定のための枠組みを与える
  3. 環境保護に対するコミットメントを含む(汚染の予防、組織の状況に関連するその他の固有なコミットメントを含む)
  4. 順守義務を満たすことへのコミットメントを含む
  5. 環境マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメントを含む

 

a)で言っている「組織の状況」とは、先に見た4.1や4.2で特定された組織の状況のことを言っています。ここでは「環境方針を策定する際に参考にすべきこと」について規定しており、ここに挙げられた内容(目的、活動、製品・サービスの性質、規模、状況)と整合している必要がある、ということが求められています。これが整合していないと、組織の実態と、環境マネジメントシステムとして目指す方向性としての環境方針が合わない、ということになってしまい、結果として環境方針に基づいて策定される環境目標も組織の実態とずれたものになってしまい、組織として有効なものにならない、ということになるでしょう。従って、そのようなことのないようにするためにも、環境方針はここに挙げられた事項に沿ったものにする必要があるのです。

 

ここではまた、以下の3つのことに対するコミットメントを含むことが求められています。

  • 環境保護に対するコミットメント(c)
  • 順守義務を満たすことへのコミットメント(d)
  • 環境マネジメントシステムの継続的改善へのコミットメント(e)

 

「コミットメント」とは、ここでは「約束」という意味で理解すれば良いでしょう。これは、環境方針の内容からこのような趣旨が読み取れるようにしてください、ということであって、これらの文言をそのまま含めることを意図しているわけではありません。

 

なお、c)で「組織の状況に関連するその他の固有なコミットメント」ということが言われていますが、これには以下のようなものが含まれ得ることが、続く「注記」で説明されています。

  • 持続可能な資源の利用
  • 気候変動の緩和と気候変動への適応
  • 生物多様性や生態系の保護

環境方針の「運用」

後半部分では、環境方針の「運用」について規定されています。ここでは以下のことが要求されています。

  • 文書化した情報として維持する
  • 組織内に伝達する
  • 利害関係者が入手可能であるようにする

 

ここで、環境方針は「文書化した情報」として維持することが要求されていますので、何らかの形で文書化する必要があります。9.3では、マネジメントレビューからのアウトプットに、「環境マネジメントシステムの変更の必要性に関する決定」を含めることが要求されていますので、実際にはマネジメントレビューでの検討の結果、状況の変化やそれに伴うリスクの変化に伴って環境方針を変更する必要がないか、ということを判断することになるでしょう。

 

「環境方針」は、環境に関してトップマネジメントが示した意図・方向付けであり、環境マネジメントシステムの方向性を決める根幹となるものですから、当然ながら、ただ設定すれば良いのではなく、それが組織内できちんと理解される必要があります。ここで重要なのは、環境方針の文言を暗記しているということではなく、そこに込められたメッセージが正しく理解され、環境方針を達成するために自分が何をすべきかが理解されていることです。そのためには、組織内での掲示や、朝礼などを通じた周知、方針カードの携帯など、様々な伝達の方法があり得るでしょう。

 

また、環境方針が関連する利害関係者に入手可能であるようにする、ということも要求されています。一般的には、組織のホームページやパンフレットに掲載するなどの方法があるでしょう。

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