【言葉のチカラ】耐える

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中が大きな困難に直面しています。

しかし人類は今までも数々の苦難に遭遇しながら、そのたびにそれらを乗り越え、力強く立ち上がってきました。

「言葉」によって目に見えないものの存在や価値を認識することができる唯一の生き物である私たち人間は、そのような苦境に直面した時、たった一つの「言葉」との出会いによってその苦境を乗り越える勇気や希望を与えられることがあります。

言葉がもつそのような「チカラ」を信じ、ここでご紹介する言葉が、誰かにとってのそのような出会いの言葉となることを祈って。

人間というものは、悲しさ、無念さを心底から味わいながら、それに耐えなければならない。長い人生の中で、一年や二年の遅れは、モノの数ではない。(本田宗一郎)

本田宗一郎は言わずと知れた戦後日本を代表する経営者で、世界の「ホンダ」の創業者。その型破りな発想と情熱、そして盟友・藤沢武夫氏との名コンビぶりなど、今でも多くの人が愛し、尊敬してやまない経営者の一人だと思います。

 

一代で大業を果たした人は例外なく大きな挫折や苦難を経験し、彼もその例に洩れませんが、そのような中で培われた強さは何物にも代え難い財産になるのでしょう。

 

大学受験に失敗し、当時の自分としてはそれなりの挫折感を感じていたとき、祖母から「一年くらい何でもないよ」と言われた言葉に救われた経験がありますが、長い人生を生きてきた祖母から見たら、一年や二年の足踏みは本当に取るに足らないことだったのだと思います。(この「足踏み」は単に自分の努力不足が原因で、今子どもたちがコロナによって強いられているものとは根本的に異なりますが、それでも、子どもたちには「長い人生、一年や二年の遅れなどモノの数ではない」と言ってあげたいです)

 

今回のコロナも感染自体は早晩収束していくことは間違いありませんが、その影響は今後数年は続くと考えられます。その間私たちの多くが「足踏み」や「遅れ」を余儀なくされるでしょうが、今は何とかそれに持ち堪え、あとで「あの経験があったからこそ今がある」と言えるようにしたいものです。

 

本田宗一郎(1906~1991)

日本の実業家、技術者。本田技研工業の創業者。