【言葉のチカラ】自由

新型コロナウイルスの感染拡大によって世界中が大きな困難に直面しています。

しかし人類は今までも数々の苦難に遭遇しながら、そのたびにそれらを乗り越え、力強く立ち上がってきました。

「言葉」によって目に見えないものの存在や価値を認識することができる唯一の生き物である私たち人間は、そのような苦境に直面した時、たった一つの「言葉」との出会いによってその苦境を乗り越える勇気や希望を与えられることがあります。

言葉がもつそのような「チカラ」を信じ、ここでご紹介する言葉が、誰かにとってのそのような出会いの言葉となることを祈って。

与えられた事態に対してどういう態度をとるかは、誰にも奪えない、人間の最後の自由である。
(ヴィクトール・フランクル)

ヴィクトール・フランクルは、第二次大戦時に「絶滅収容所」とも言われたナチスの強制収容所を奇跡的に生き延び、主著『夜と霧』で、精神科医としての冷静な目で収容所での壮絶な体験をつづっています。

 

あらゆる自由を奪われた囚人たちの多くは精神を崩壊させ、あらゆることに無関心、無感動になっていったといいます。しかし、そのような中でも最後まで天使のようにふるまった人たちがいました。そこにフランクルは、ナチスといえども唯一奪うことができなかった自由、つまり「与えられた事態にある態度をとる人間の最後の自由」を見ました。

 

10年前にアウシュヴィッツの強制収容所を訪れたとき、人間の尊厳を徹底的に無視した冷たさと恐ろしさを見せつけられ、戦慄した覚えがあります。しかし、そんな考え得る最悪の状況においてもなお、人間としての優しさ、気高さを失わなかった人たちが実際に存在したことに、大きな勇気と希望を感じずにはいられません。

 

ヴィクトール・フランクル(1905~1997)

オーストリアの精神科医、心理学者。ナチス強制収容所生存者。