2026年改定に向けて、
いま認証取得企業が知っておくべき最新動向
ISOマネジメントシステム規格は、約5年ごとに体系的な見直しが行われ、社会環境や企業経営の変化を反映しながら進化してきました。現在、品質マネジメントシステム規格「ISO 9001」と環境マネジメントシステム規格「ISO 14001」は、ともに2026年発行予定の改定作業が進行中です。
そこで、本記事では、すでにISO認証を取得している組織の経営者・実務担当者が押さえておくべき改定の方向性を、現時点の最新情報に基づいて解説します。
現在(2026年2月時点)の改定作業進捗状況
現在の改定進捗状況は以下の通りです。
<ISO9001>
現在DIS(国際規格草案)段階で、今後以下の予定進められる予定です。
2026年5月 FDIS(最終国際規格草案)投票開始予定
2026年9月 IS(国際規格)発行予定
<ISO14001>
現在FDIS(最終国際規格草案)段階で、今後以下の予定で進められる予定です。
2026年3月 IS(国際規格)発行予定
ISO規格全体に起きている大きな変化
まず理解しておきたいのは、今回の改定は「別物に変わる」のではなく、時代に合わせて“進化”する改定であるという点です。
近年のISOマネジメントシステム規格では、次のようなテーマが共通して重視されるようになっています。
- 気候変動・持続可能性への対応※
- 改定された附属書SLとの整合
- 附属書A(解説)の充実
- リスクと機会のより明確な整理(ISO9001)
- 組織文化・倫理・トップマネジメントの役割強化(ISO9001)
- 変更管理の明確化(ISO14001)
※「気候変動」については、すでに2024年に追補版としてすべてのマネジメントシステム規格に正式に組み込まれています。
ISO 9001改定の方向性(品質)
ISO 9001は、2026年9月の発行が予定されています。現時点で示されている内容を見る限り、要求事項そのものの大幅な追加・削除は予定されていません。
今回の改定の特徴は、「要求事項を変える」というよりも、意図をより明確にする、現代的テーマをはっきり位置づけるという点にあります。
主なポイントは次の通りです。
気候変動の明確化(4.1, 4.2)
すでに追補で導入された内容が正式に組み込まれ、「組織の状況」において、気候変動が自社にとって関連する課題かどうかを判断することが求められます。
※但し、この点については、すでに2024年2月に発行された追補版(ISO9001:2015/Amd.1:2024)に正式に組み込まれています。
リスクと機会の整理(6.1)
従来ひとまとめに扱われがちだった「リスク及び機会」について、
- 望ましくない影響を及ぼす可能性(リスク)
- 望ましい影響をもたらす可能性(機会)
を分けて考え、対応することがより明確になります。
トップマネジメントと品質文化・倫理(5.1)
経営層には、品質方針や目標だけでなく、「品質文化」と「倫理的行動」を促進することが明確に求められます。
附属書SLの改定版との整合性
その他、2024年に改定された、マネジメントシステム規格の共通構造を示したISO指令の附属書SLの最新版に従って、細かい修正があります。
附属書A(解説)の大幅充実
要求事項そのものは大きく変わらない一方、規格の意図が理解しやすくするための解説が大幅に追加される方向です。
総じて言えば、ISO 9001は「書類中心」から「経営と現場に根づくマネジメントシステム」への進化をよりはっきり打ち出した改定といえます。
ISO 14001改定の方向性(環境)
ISO 14001は2026年3月の発行が予定されています。こちらもISO 9001と同じく、現時点で示されている内容を見る限り、要求事項そのものの大幅な追加・削除は予定されていません。
気候変動の明確化(4.1, 4.2)
すでに追補で導入された内容が正式に組み込まれ、「組織の状況」において、気候変動が自社にとって関連する課題かどうかを判断することが求められます。
※但し、この点については、すでに2024年2月に発行された追補版(ISO14001:2015/Amd.1:2024)に正式に組み込まれています。
「環境状態」の例の明確化(4.1)
組織に影響を与える、又は組織から影響を受ける可能性のある「環境状態」の例を明確にする追加があります(汚染レベル、天然資源の入手可能性、気候変動、生物多様性や生態系の健全性など)。これは、気候変動のみを対象とするすべてのISOマネジメントシステム規格の2024年追補版を超える内容になっています。
要求事項の順序の変更(6.1)
「リスク及び機会への対応」(6.1)の要求事項の順序が、環境側面(6.1.2)と順守義務(6.1.3)を特定し、次に、関連するリスクと機会(6.1.4)を特定し、それからそれらに対処するために必要な処置を計画する(6.1.5)、という順番に変更されています。
変更管理の明確化(6.3)
最新版の附属書SLに準拠するために6.3の要求事項が追加されました。8.1にすでにある変更の管理された実施の要求事項に加えて、包括的な変更管理のプロセスが要求される予定です。
附属書SLの改定版との整合性
その他、2024年に改定された、マネジメントシステム規格の共通構造を示したISO指令の附属書SLの最新版に従って、細かい修正があります。
附属書A(解説)の大幅な改善
要求事項そのものは大きく変わらない一方、解説部分が改善され、規格の意図が理解しやすくなる予定です。
ISO 14001は、「環境配慮型経営」から「持続可能性をより意識したマネジメントシステム」への進化と捉えると分かりやすいでしょう。
認証取得企業はいま何を意識すべきか
現時点で、すぐに対応しなければならない新しい要求事項は多くありません。しかし、今回の改定は確実に次のメッセージを組織に投げかけています。
- 気候変動・環境課題を「他人事」にしていないか
- マネジメントシステムが経営や現場の意思決定に本当に使われているか
- リスクだけでなく「機会」を戦略に結びつけているか
- 文化・倫理・人の行動に踏み込めているか
従って、今回の改定を、自社のマネジメントシステムを“形式”から“経営の道具”へ進化させるきっかけと捉えることが重要です。
まとめ
ISO 9001・ISO 14001の改定は、「要求事項が激変する改定」ではありません。
むしろ、
- 気候変動
- 持続可能性
- 組織文化
- 経営との統合
といった要素を明確に位置づけることで、ISOをより経営に役立つ仕組みへ進化させる改定です。
すでに認証を取得している組織にとって、最大のポイントは、「審査のためのISO」から「経営と改善に効くISO」へどう高めるかという点でしょう。
今回の改定への対応を、その絶好のチャンスと捉えていただくことを期待しております。


