【ISO9001】9.1.2 顧客満足

製品・サービスに対する顧客満足を監視しよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「組織の製品・サービスに対する顧客満足の状況を監視しなさい」ということです。ISO9001が「顧客満足の向上」を目的としていることを考えると、非常に重要な項目と言うことができるでしょう。

「顧客満足」とは何か?

この項目は、顧客が、組織が提供した製品・サービスに対する「顧客満足」の状況を監視することを要求しています。「顧客満足」とは、規格で以下のように定義されています。

「顧客の期待が満たされている程度に関する顧客の受け止め方」(ISO9000:2015, 3.9.2)

以前は、「顧客満足」は「顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受けとめ方」と定義されていましたが、現在の定義では「顧客の要求事項が満たされている程度」から「顧客の期待が満たされている程度」に変わっています。これは、顧客満足が顧客の明確な「要求事項」だけでなく、必ずしも明確に表明されない「期待」を満たすことによって得られることをより明確に表すためと考えられますが、「要求事項」の定義が「明示されている、通常暗黙のうちに了解されている若しくは義務として要求されている、ニーズ又は期待」と既に「期待」を含んでいることを考えれば、これ自体は実質的に大きく変更されているわけではないと言えるでしょう。

ただ、ISO9000:2015の「顧客満足」の定義に追加された「注記1」において、以下のようなことが言われていることは注目に値します。

  • 顧客の期待は、製品・サービスが提供されるまでは組織、更には顧客自身もそれを知らないことがありうる

今や多くの人が当たり前に持っているスマートフォンも、それが登場する前には顧客(つまり我々消費者)自身、そのような製品に対する期待は持っていませんでしたが、それが登場することによって、今まで自分たち自身が認識していなかったニーズが満たされ、高い満足を得ることができ、その結果社会全体を大きく変革するほどの爆発的なヒットとなりました。ここからも分かるように、本当に革新的な製品やサービスは、顧客自身も認識していないようなニーズや期待を満たすものであり、この定義では、「顧客の期待」にはこのようにまだ知られていないものまで含み得ることを想定している点に注意すべきでしょう。

「顧客満足」をどのように監視するか?

それでは、このような「顧客満足」をどのように監視したら良いのでしょうか。その方法は最終的にはもちろん組織が決めることになりますが、この項目の注記には顧客満足の監視方法の例が列挙されていますので参考になるでしょう。ここで挙げられている監視方法には、大きく分けて顧客から直接入手する方法と間接的な情報や指標によって判断する方法の二つがあります。

  • 顧客からの直接入手
    • 顧客訪問や会合を通じたコミュニケーション
    • 顧客から直接寄せられた苦情・不満や賛辞
    • 顧客アンケート
    • 製造業における顧客からの協力会社評価結果
    • 建設業における発注者による竣工検査結果や評価結果等
  • 間接的な情報・指標
    • 市場シェア分析
    • 販売店、消費者団体等からの報告
    • 種々のメディアからの報告
    • 顧客の紹介数や口コミ件数
    • 製品の返却やサービスの解約状況
    • 補償請求
    • リピート注文の状況等

「顧客満足の監視」というと、多くの組織が顧客アンケート調査を思い浮かべるでしょう。確かに顧客に対してアンケート調査を行うのは、顧客満足の監視のための代表的で有効な方法の一つです。しかしながら、上記からもわかるようにアンケート調査はあくまで顧客満足を監視する一つの方法であり、これが唯一の方法ではありません。また、組織の扱う製品・サービスや、相手にしている顧客によっては、アンケートが必ずしも有効ではないこともあり得るでしょう。また、上で見たように、顧客自身が自分たちの持っているニーズや期待に気付いていないこともありますので、そのような場合は顧客に聞いても分からないかもしれません。

従って、組織はその状況(どのような製品・サービスを提供しているか、どのような顧客を相手にしているか等)を十分考慮し、組織にとって最も有効と考えられる方法を採用することが望ましいでしょう。いずれにしても、ここで重要なことは、これらの顧客満足の情報を入手し、監視することで、顧客満足の向上に向けた改善につなげることであり、それに役立つような方法で監視することです。