【ISO9001】4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス(2)
自分たちのシステムにどのようなプロセスがあるのかを明らかにしよう
(前回の続き)
「プロセス」の分類?
組織の品質マネジメントシステムには様々なプロセスがありますが、これらのプロセスは「マネジメントプロセス」「運用プロセス」「支援プロセス」に分類することができます(ISO9001:2015規格でも7は「支援プロセス」について、8は「運用プロセス」について規定しており、このような考え方を踏襲していると言えます)。ここではそれぞれ以下のような意味として想定しています。
- マネジメントプロセス: マネジメントシステムを全体として統合するようなプロセス(例 戦略策定プロセス、目標計画策定プロセス、監視・測定・分析・評価プロセス、内部監査プロセス、マネジメントレビュープロセス、改善プロセス等)
- 運用プロセス: 製品・サービスを提供することに直接関連するプロセス(例 受注プロセス、設計プロセス、購買プロセス、製造プロセス等)
- 支援プロセス: 運用プロセスの効果的な実施を支援するプロセス(例 教育訓練プロセス、設備管理プロセス、コミュニケーションプロセス、文書管理プロセス等)
このプロセスの分類を「演劇の舞台」でたとえると、「運用プロセス」は舞台上で観客の前で演じている役者、「支援プロセス」は観客からは見えない大道具や照明、音響などの裏方さん、そして「マネジメントプロセス」は演劇全体を方向付ける監督ということになるでしょう。これらがそれぞれうまく機能したときに素晴らしい舞台ができるように、マネジメントシステムがうまく機能する上でもこれらのプロセスがそれぞれ有効に機能し合うことが必要なわけです(下図参照)。
プロセスをこのような分類で捉えた場合、業種や組織によって最も異なるのは「運用プロセス」であり、その他の「マネジメントプロセス」や「支援プロセス」ある程度共通的なものと考えられるため、上記の組織固有の「事業プロセス」を考える場合は、特にその「運用プロセス」に注目することが重要でしょう。
「プロセスをPDCAサイクルに基づいて管理する」とは?
ただ、「マネジメントシステムを構成するプロセスを明確にした」だけではプロセスアプローチとは言えません。もう一つ、それらの個々のプロセスを「PDCAサイクルに基づいて管理」する必要があります。「PDCAサイクル」とは、0.3.2で以下のように説明されています。
- Plan:システム及びそのプロセスの目標を設定し、顧客要求事項及び組織の方針に沿った結果を出すために必要な資源を用意し、リスク及び機会を特定し、かつ、それらに取り組む。
- Do:計画されたことを実行する。
- Check:方針、目標、要求事項及び計画した活動に照らして、プロセス並びにその結果としての製品及びサービスを監視し、(該当する場合には、必ず)測定し、その結果を報告する。
- Act:必要に応じて、パフォーマンスを改善するための処置をとる。
つまり、それぞれのプロセスで「計画(P)」「実施(D)」「監視(C)」「処置(A)」のサイクルが繰り返し回され、結果として継続的改善につながるような形でプロセスが運用されるようにする必要があります。例えば、製造業における製造プロセスであれば、「P」では製造プロセスをどのように行うか(手順)が手順書やフローチャートなどで計画され、「D」ではその計画(手順書やフローチャート)に従って実施され、「C」では製造した結果として不良率のような指標が監視・測定され、「A」では不良率が悪かった場合にその改善処置がとられることになります。
なお、PDCAサイクルの考え方は個々のプロセスのレベルだけでなくマネジメントシステム全体のレベルにも適用されます。つまり、システムが全体として適切に計画され(P)、個々のプロセスを通じて実施され(D)、その結果としてのシステムのパフォーマンスが監視され(C)、その結果を受けて必要な改善が行われる(A)ことが、システムのレベルでも必要です(下図参照)。
(次回に続く)