【ISO9001】4.4 品質マネジメントシステム及びそのプロセス(1)
自分たちのシステムにどのようなプロセスがあるのかを明らかにしよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「自分たちの品質マネジメントシステムがどのようなプロセスから構成されているのかを明確にし、それらをPDCAサイクルに基づいて管理しなさい」ということです。言い変えると「自分たちの品質マネジメントシステムを『プロセスアプローチ』に基づいて管理しなさい」ということです。ただ、この「プロセスアプローチ」という言葉はよく耳にする言葉だと思いますが、なかなか分かりにくい言葉ですね。
「プロセスアプローチ」とは?
「プロセスアプローチ」とは、マネジメントシステムに対して「プロセス」の視点から「アプローチ」する(取り組む)、ということです。では、「プロセス」とは何でしょうか。「プロセス(process)」を英和辞典で調べると「過程、工程、方法、手順」といった訳語が出てきますが、ISO9000:2015では特別に以下のような定義しています。
「インプットを使用して意図した結果を生み出す、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」(3.4.1)
ここで言うプロセスの「意図した結果」を、「アウトプット」と言ったり、「製品」「サービス」と言ったりします(ISO9000:2015, 3.4.1の注記1)。そして、プロセスへの「インプット」は通常、他のプロセスからの「アウトプット」であり(ISO9000:2015, 3.4.1の注記2)、このような形で複数のプロセスが相互につながりを持っています。
つまり、「マネジメントシステムをプロセスの視点から捉える」とは、「マネジメントシステムをプロセスという構成要素のつながりとして捉える」ということになります(ちなみに「システム」とは「相互に関連する又は相互に作用する要素の集まり」(ISO9000:2015, 3.5.1)と定義されており、ここで言う「要素」が「プロセス」ということになります)。これをイメージ図として表すと以下のようになるでしょう。
「プロセス」をどのように明確化するか?
従って、ここではまず、「自分たちの品質マネジメントシステムはどのようなプロセスから構成されているのか」を考えることが重要です。では、それらのプロセスはどのように明確にしたら良いのでしょうか。これを考える際には、後に出てくる5.1で言及されている「事業プロセスへの統合」という視点を合わせて考える必要があります(「事業プロセス」とは、ここでは「自分たちの組織の本来の事業活動を構成するプロセス」、と考えれば良いでしょう)。以下にいくつかの業種で典型的に考えられる固有の「事業プロセス」の例を挙げました(ただし、これらはあくまで例であって、必ずしもこれらが事業プロセスの全てというわけではなく、またこのような区分けでプロセスを規定しなければならないというわけでもありません)。
<受託加工業>
- 受注プロセス(顧客からの要求を仕様書や図面等によって確認して受注するプロセス)
- 生産準備プロセス(新規受注品を加工するために必要な設備や工程等の準備を行うプロセス)
- 購買プロセス(必要な材料等を外部から調達するプロセス)
- 製造プロセス(仕様に従って加工するプロセス)
- 検査・出荷プロセス(必要な検査を行い、顧客に引き渡すプロセス)
<建設業>
- 契約プロセス(発注者の要求事項を確認し、積算・見積りを行い、契約を締結するプロセス)
- 設計プロセス(構造物の具体的な仕様を構造計算や図面作成等によって明確にするプロセス)
- 施工計画プロセス(構造物を施工するための体制や工程等を計画するプロセス)
- 施工プロセス(施工計画や仕様に従って施工を行うプロセス)
- 外注先管理プロセス(適切な外注先を選定し、仕事を委託し、監視するプロセス)
- 引渡しプロセス(構造物に対する必要な検査を行い、発注者に引き渡すプロセス)
<歯科医院>
- 新患受入プロセス(新規患者の基本的な情報やニーズを把握し、登録するプロセス)
- 検査プロセス(患者の口腔内の状況を把握するために必要な検査を行うプロセス)
- 治療計画プロセス(検査結果に基づいて必要な治療計画を立てるプロセス)
- 治療プロセス(治療計画に従って治療を行うプロセス)
- 技工プロセス(治療において必要になる技工物を製作するプロセス)
- メンテナンスプロセス(口腔内を定期的に監視し、クリーニングや検査等の必要なメンテナンスを行うプロセス)
(次回に続く)