【2015年改定のポイント】(3)事業プロセスへの統合
ISO9001とISO14001の2015年改定ポイント解説の3回目は「事業プロセスへの統合」です。
これが明確に言及されているのは改定規格の5.1くらい(ISO14001ではその他にも数箇所出てきますが)ですが、その意味するところは非常に大きく、今回の改定の目的を達成する上での中核的な要素のひとつと言ってもよいくらい、非常に重要な変更点です。具体的には、5.1において「トップマネジメントが、要求事項を組織の事業プロセスに統合することによってリーダーシップとコミットメントを実証しなければならない」という形で要求されています。
それでは「要求事項の事業プロセスへの統合」とは何を意味するのでしょうか。組織の「事業プロセス」とは、平たく言えば組織で実際に運用されているプロセス(仕事の流れ)、ということです。つまり、規格の要求事項を、あくまで組織で実際に運用しているプロセスの中に組み込んで対応してください、ということです。
今までのISO9001や14001の運用の中で大きな問題となってきたのが、これらの規格要求事項に対応するために構築されたマネジメントシステムが組織の実際の運用とかけ離れたものになってしまっている、ということでした。マネジメントシステムの形骸化を防ぎ、有効なマネジメントシステムの運用につなげるためにも、規格の要求事項を組織の実際の「事業プロセス」に組み込まなければならないという強い思いが規格作成者にあり、それがこのような形で要求事項に現れたと考えられます。
それでは、具体的にはどうしたら良いのでしょうか。
最も重要なことは「規格の要求事項から考える」のではなく、あくまで「組織のプロセスから考える」ということです。言い換えると、「規格の要求事項を満たすためにどうするか」と考えるのではなく、「自分たちはどのようなプロセスで動いていて、その結果規格の要求事項が満たされているか」と考える、ということです。今回の改定では、「品質マニュアル」や「環境マニュアル」の明示的な要求はなくなりましたが(「環境マニュアル」の要求は元々ありませんでしたが)、これも、「マニュアル」というと規格要求事項の裏返しのものをイメージしてしまうからであり、そのようなマニュアルは審査対応には役立つかもしれませんが、組織の実際の業務にはほとんど役立たないでしょう。その代わりに新しい改定規格では、「組織のマネジメントシステムのプロセスを必要な程度文書化する」ことが要求されることになりますので、あくまで「自分たちのプロセスはどのようになっているのか」を自分たちに分かりやすいように、必要な程度文書化することが重要です。
<考え方のポイント>
自分たちのシステムを構成するプロセスが正しく把握され、それらのプロセスの中で規格要求事項が実現されるように必要な文書化が行われ、実施されているだろうか?