【ISO14001】4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定

どこまで適用するのかを決めよう

この項目の要求事項を一言で言うと、「自分たちの環境マネジメントシステムがどこまで適用されるのか(=適用範囲)を決定しなさい」ということです。環境マネジメントシステムを構築・運用する前にこれを明確にしておかないと、後になって「大事なところが入っていなかった!」ということや、逆に「ここまでの範囲は責任持てない!」というようなことが起こってしまいかねませんので、特に大規模・複雑な組織や様々な事業を行っている組織は慎重に検討しましょう。

「適用範囲を決定する」とは何をすることか

では、「適用範囲を決定する」とは、具体的に何を決めることなのでしょうか。これは言い換えると「境界と適用可能性」を決定するということです。つまり、「適用されるところとされないところの境はどこか」(=境界)を決め、「その範囲内で規格の要求事項がどのように適用できるのか」(=適用可能性)を決めるということです。「境界」は、具体的には組織単位・所在地(例 本社:○○県△△市~)や、適用の対象となる活動や製品・サービスの範囲(例 ○○の製造、△△の提供)を明示することによって示すことになるでしょう。

 

「適用範囲」を決めるのはあくまでそれぞれの組織ですから、その決定に当たっては基本的に組織にその判断の自由度と柔軟性が認められます。しかし、「適用範囲を決めなさい」といっても、やみくもに決めれば良い訳ではなく、当然「適切な」適用範囲を決めなければなりません。組織によっては、全体を適用範囲とすることもあるでしょうし、組織の一部を適用範囲とすることもあるでしょうが、特に組織の一部を適用範囲とする場合は、その「適切性」が問題になる場合がありますので注意が必要です。これについては、ISO14001:2015の附属書A.4.3でも「環境マネジメントシステムの信憑性は、どのように組織上の境界を選定するかによって決まる」と言っており、適切な境界を設定することの重要性を強調しています。

「適用範囲」をどのように決定するか

上で書いたように、組織によっては全体ではなく一部に限定して環境マネジメントシステムを適用しようとするところもあるでしょうし、ISO14001:2015でも、附属書A.4.3で「組織は、組織の境界を定める自由度及び柔軟性をもつ。組織は、この規格を組織全体に実施するか、又は組織の特定の一部において実施するかを選択しても良い」と言っているように、組織がそのように適用範囲を一部に限定することを認めています。

 

では、その上で「適切な」適用範囲を決めるにはどのようなことを考慮したら良いのでしょうか。この項目は、適用範囲を決める際に考慮すべきこととして以下の5つを挙げています。

  1. 4.1で特定した、組織の内外の課題
  2. 4.2で特定した、順守義務
  3. 組織の単位、機能、物理的境界
  4. 組織の活動、製品・サービス
  5. 管理し影響を及ぼす、組織の権限と能力

 

ここで早速4.1、4.2で検討したことが出てきますね。これらの項目によって、「自分たちの組織はどのような組織なのか(=組織の状況)」を把握し、それが最終的に組織の「戦略的方向性」につながる、と書きましたが(4.2参照)、適用範囲を決める際にはこの「組織の状況」と、そこからくる組織の「戦略的方向性」から考えて重要と考えられるところを含めるようにすべきでしょう。

 

また、e)については、ISO14001:2015の附属書A.4.3で「組織は、ライフサイクルの視点を考慮して、活動、製品及びサービスに対して管理できる又は影響を及ぼすことができる程度を完投することとなる」言っているように、どこまで管理し、影響を及ぼすことができるかを考慮する際にライフサイクルの視点を持つことが重要です。また、当然ながら、「著しい環境側面を持つ、あるいは持つ可能性のある活動、製品・サービス、施設を除外したり、順守義務をのがれたりするために、適用範囲を決定するべきではない」ことは言うまでもありません。

 

適用範囲を決定した後は、「その適用範囲の中にある組織の全ての活動、製品及びサービスは、環境マネジメントシステムに含まれている」必要があります。従って、物理的な適用範囲の中で実施している活動でありながら、「この活動は適用範囲外」「この製品・サービスは適用範囲外」と言うことはできません。これは、製品やサービスを選択的に適用範囲に含めることができるISO9001との大きな違いです。

「適用範囲」をどのように文書化するか

最後に、ここで決定した適用範囲は文書化することが要求されています。適用範囲は、特に対外的に重要な意味を持っていますので、誤解のないように正確な内容を文書として示すことが重要です。実際には、多くの組織で作成されている「環境マニュアル」のような文書の中や、また対外的に示すという意味でパンフレットやウェブサイトで記述するということもできるでしょう。