概要

ISO 45001は「労働安全衛生マネジメントシステム」の要求事項を規定した国際規格です。
従来この分野においてはOHSAS18001規格が世界で広く使用されてきましたが、長年の国際規格化の努力がようやく実り、2018年3月に国際標準化機構(ISO)によって策定されました。

歴史

労働安全衛生マネジメントシステムの規格化は1980年代に英国でBS8750が制定されたのが最初といわれています。その後ISO化が期待されましたが、指針規格であるBS8800の発行に止まりました。
労働安全衛生に関して国際的なものはILO(国際労働機関)が決定すべきとの考えが多く、また各国固有の法律もあったため、ISOによる国際規格の発行は見送られてきました。
その間、1999年に国際コンソーシアムによるOHSAS18001規格が発行され、ISO14001:2004の改定を受けて、OHSAS18001も2007年に改定されました。
その後、附属書SLによるISO規格構造の統一が提唱され、OHSASプロジェクトグループでもOHSAS18001をISO9001、ISO14001との整合が取れるように改定することが決定され、2013年にISO化が決定、2018年3月に長年待たれた労働安全衛生マネジメントシステムのISO規格としてISO45001が発行されました。

目的

2017年のILOからの報告によると、毎年278万件の大規模な事故が職場で発生しており、毎日7,700人が仕事上の負傷や疾病によって亡くなっています。致命的ではない負傷や疾病の発生は毎年3億7,400万にものぼり、その多くの人は仕事からの離脱を余儀なくされています。
ILOはまた2013年の報告で、世界中の疾病、負傷、死亡の総費用が世界の国内総生産(GDP)の3.94%、すなわち2兆9000億米ドルであるとの見通しを明らかにしました。このように、労働安全衛生は経済発展や社会開発にも大きな影響を与えています。
労働安全衛生マネジメントシステムは、従業員、訪問者、又は職場にいるそのほかの人の負傷及び、疾病を防ぐため、その安全に影響するか又は影響する可能性がある条件や要因を管理するものであり、ISO45001は、労働に関係する負傷及び疾病を防止すること、安全で健康的な職場を提供するとともに、ひいてはビジネス全体の損失を防ぐことを目的としています。
組織の社会的な責任や適正なガバナンスが重視される今日、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001への期待はますます高まっていくでしょう。

メリット

ISO45001に基づく労働安全衛生マネジメントシステムを適切に導入することで、例えば以下のようなメリットが期待できるでしょう。
◆職場の安全基準を向上させ、労働災害や健康状態の悪化を防ぎ、安全で健康的な職場環境を構築できる。
◆組織で働く人や組織に関わるすべての人の安全確保のために組織のプロセスが管理されているという信頼を対外的に与えることができる。
◆事業継続リスクの低減につながり、経営者にとって安定的な事業継続の一助となる。
◆労働安全衛生に関係する法規制を順守するための仕組みを持ち、法規制の確実な順守に向けた取り組みを行っている組織であるという信頼を対外的に与えることができる。
◆全社員の安全衛生に対する意識を向上させることができる。