【形骸化】ISOのルールが形骸化してきたと感じる。何が原因?
ISOを取得して数年が経つと、「ルールはあるが使われていない」、「記録はあるが改善に使われていない」、「ISOが“維持作業”になっている」と感じる組織は非常に多くなります。
多くの認証組織を見てきた中で、形骸化している組織には共通して以下のような原因があるように思われます。
原因1:業務の変化に文書が追いつかなくなる
ISO文書は「取得した時点の業務」を前提に設計されています。しかし組織は毎年変わります。顧客要求は変わり、システムは変わり、人も変わります。
よくある現場の状態
- 新しい業務フローが増えているのに、手順書は旧フローのまま
- クラウドやSaaSを導入したが、文書は紙前提
- 担当変更後、実態は変わったが文書は更新されていない
- 現場では「実際はこうしている」が当たり前になっている
なぜ形骸化するのか
実態と文書がズレると、社員は文書を「守れないルール」と認識します。守れないルールは、必ず無視されます。無視されるルールは、やがて“誰も読まないルール”になります。
放置すると起きる悪循環
文書と実務の乖離
→ 文書を見なくなる
→ 記録は審査用に作る
→ ISOが別世界になる
→ 形骸化が定着
原因2:「なぜやるのか」が語られなくなり、作業化する
取得直後は「品質向上」、「事故防止」、「信頼確保」と語られていた目的が、数年後にはほとんど語られなくなります。
よくある現場の状態
- 「審査があるから書いている」
- 「去年と同じ目標を設定している」
- 「ISOは事務局の仕事」
- 若手社員がISOの目的を知らない
なぜ形骸化するのか
意味が分からない活動は、必ず“最小限の対応”になります。最小限の対応はやがて形式になります。形式は「形」だけが残ります。
放置すると起きる悪循環
目的不明
→ やらされ感
→ 最小限対応
→ 価値が生まれない
→ さらに目的が語られなくなる
原因3:ルールと文書が肥大化し、現場が守れなくなる
「きちんとしよう」と思うほど、ISOの文書とルールは増えていきます。
よくある現場の状態
- 誰も全部読んでいない分厚い手順書
- 形だけチェックされる記録類
- 多くの段階を経なければならない承認フロー
- “ISOのための仕事”が増えている
なぜ形骸化するのか
現場が守れない仕組みは必ず形だけになります。
チェックは「〇を付ける作業」になり、承認は「流すだけ」になります。
放置すると起きる悪循環
複雑化
→ 現場の負担増
→ 形だけ運用
→ ルール軽視
→ さらに形骸化
原因4:ISOが担当者に閉じ、属人化する
運用が安定すると、担当者が固定化されます。するとISOは「その人の仕事」になります。
よくある現場の状態
- 文書の意図を説明できるのは担当者だけ
- 他部門は内容を理解していない
- 担当者異動で運用が混乱
- 改善提案が出なくなる
なぜ形骸化するのか
ISOが「自分ごと」でなくなった瞬間、組織は考えなくなります。考えない仕組みは進化せず、必ず陳腐化します。
放置すると起きる悪循環
属人化
→ 思考停止
→ 更新されない
→ 現場乖離
→ 形骸化
原因5:内部監査が形式化し、ズレに問題提起できていない
本来、内部監査は形骸化を止める“最後の砦”です。しかし多くの組織で内部監査自体が形骸化しています。
よくある現場の状態
- チェックリストを埋めるだけ
- 実態と違うと分かっていても指摘しない
- 不適合がほとんど出ない
- 同じ所見が毎年並ぶ
- 内部監査員が遠慮している
なぜ形骸化するのか
内部監査で問題提起されなければ、「この状態で良い」というメッセージが組織全体に出ます。
放置すると起きる悪循環
内部監査が止まる
→ 文書乖離が放置
→ 現場が文書を捨てる
→ ISOが別物になる
→ 完全な形骸化
本来の内部監査の役割
「ありますか?」ではなく
「使われていますか?」
「役に立っていますか?」
「変化に追いついていますか?」
を問うことです。
まとめ:形骸化の正体は「問いが止まった状態」
ISOの形骸化とは、
組織が自分たちの仕組みに問いを立てなくなった状態です。
文書が現場からズレ、目的が語られなくなり、ルールが増え、担当者に閉じ、内部監査が形式化する。
これらはすべて、「見直す仕組み」が止まった結果として起こります。
しかし、ISOは一度形骸化しても、正しい順序で手を打てば必ず再生できます。
形骸化を止めるための“現実的な対策”
① 文書と実態のギャップを可視化する(棚卸し)
- 各部門に「実際のやり方」を書き出してもらう
- 手順書と突き合わせる
- 「守られていないルール」を洗い出す
→ ここがすべての出発点です。
② ISOの目的を再定義し、経営の言葉で語り直す
- なぜISOを維持しているのか
- 何を守り、何を強くしたいのか
- 事業戦略とどうつながるのか
を経営層の言葉で明確にし、社内に再共有します。
③ 不要な文書とルールを整理する
- 使われていない文書は廃止
- 重複文書は統合
- 記録は「改善に使われているか」で判断
→ 不要な文書を整理することで質が戻ります。
④ 内部監査の問いを変える
チェック項目中心から、次の問いに切り替えます。
- このルールは今の業務に合っていますか?
- この記録は何に役立っていますか?
- 去年と何が変わりましたか?
- 今、一番リスクが高い業務はどこですか?
内部監査を“経営の耳”に戻すことが核心です。
⑤ ISOを「担当業務」から「組織活動」に戻す
- 部門別の改善テーマ設定
- 内部監査員のローテーション
- 若手の巻き込み
- 改善事例の共有
により、ISOを再び「自分ごと」にします。
形骸化は“転換点”でもある
形骸化を感じ始めた組織は、
👉 ISOを「維持制度」から「経営ツール」に変える入口に立っています。
この段階で仕組みを立て直せるかどうかが、
ISOが“コスト”で終わるか、“資産”になるかの分かれ目です。

