宿泊施設のための持続可能性マネジメントシステム
概要
ISO21401は「宿泊施設のための持続可能性マネジメントシステム」の要求事項を規定した国際規格で、2018年12月に発行されました。
この規格は、持続可能性マネジメントシステムを実施するための環境的、社会的、経済的要求事項を規定しており、人権、顧客と従業員の安全衛生、環境保護、水・エネルギー消費量・廃棄物削減、地域経済の発展といった、持続可能性に関連した広範な内容が含まれています。ホテルや旅館などの宿泊施設が、環境的、社会的、経済的側面に配慮し、事業における持続可能性(サステナビリティ)を実現するための経営の仕組み(マネジメントシステム)はどのようなものであるべきかについてのグローバルスタンダードが示されています。
歴史
観光業は世界最大かつ最も急速に成長している経済セクターの1つであり、年間何十億人もの人々が旅行しており、その数は2030年まで毎年3.3%増加すると予想されています。また観光業は、様々な国や文化の間の相互理解と平和を促進し、多くの雇用を創出し、世界中でますます関心の高まる国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」で示された17の目標の多くに直接貢献するのに理想的な領域ともいえます。そして、宿泊施設はあらゆる観光活動の中心であり、環境への影響を改善し、社会的交流を促進し、地域経済に積極的に貢献する大きな可能性を秘めています。
これらを背景として、2018年12月、国際標準化機構(ISO)はホテルや旅館といった宿泊施設の持続可能性(サステナビリティ)マネジメントシステムの規格であるISO21401を発行しました。この規格はスペインUNEとチュニジアのINNORPIが事務局を務めるISO/TC 228で作成されました。 ISOの国際規格は多くの国の専門家から成る委員会で慎重に議論が重ねられた末に作成され、最も有名なマネジメントシステム規格であるISO9001(品質)やISO14001(環境)、ISO45001(労働安全衛生)、ISO/IEC27001(情報セキュリティ)は、全世界で合計185 万以上の認証を持ち、これらの分野におけるグローバルスタンダード(世界標準)になっています。ISO21401も同様のプロセスを経て作成されました。つまり、広く国際的な合意を得た「サステナブルな宿泊施設のためのグローバルスタンダード」であるといえます。
目的
この規格は、「宿泊施設が環境への影響を改善し、社会的交流を促進し、地域経済に積極的に貢献することを支援する」ことを目的としており、観光宿泊施設が持続可能性マネジメントシステムを実施するための環境、社会、経済的な要求事項を規定し、人権、従業員とゲストの健康と安全、環境保護、水とエネルギーの消費、廃棄物の発生などの問題に対応しています。
メリット
宿泊施設がISO21401に基づく持続可能性マネジメントシステムを導入し、適切に運用することで得られるメリットとしては以下のようなことが考えられるでしょう。
◆自然環境や地域社会に対して自分たちの活動が与える悪影響を最小化し、それらに対する貢献を最大化するための組織的な取組みを促進することができる。
◆持続可能性に対する従業員やスタッフの意識を向上させ、仕事に対するやりがいや満足度を高めることができる。
◆持続可能性に対するゲストの共感を高め、満足度やロイヤルティを高めることができる。
◆地域コミュニティとの関係を向上させることができる。
◆SDGsへの社会的な関心が高まる中、自分たちの持続可能性(サステナビリティ)に対する具体的な取組みの姿勢を、国際的に認知されたISO規格に基づいて対外的に示すことができ、ブランドイメージを高めることができる。
◆サステナビリティを経営戦略に組み込むことができ、その取り組みを継続して改善することができる。