【ISO45001】10 改善(1)
労働安全衛生マネジメントシステムを常に改善しよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「常に改善の機会を特定し、労働安全衛生マネジメントシステムを改善し続けなさい」ということです。そして、この項目は10.1~10.3の三部構成になっており、それぞれ以下のようなことが規定されています。
- 10.1:「改善」全般に関する一般的な要求
- 10.2:インシデントや不適合が発生した場合の対応に関する要求(修正、是正処置)
- 10.3:継続的改善に関する要求
インシデントや不適合に対してどのように対応すべきか
まず10.1では、9の「パフォーマンス評価」を通じて特定された改善の機会に対して、必要な取組みを実施することを要求しています。これはあくまで「改善」に関する一般的な事項であり、この取組みを具体的に規定しているのが続き10.2と10.3ということになります。
10.2では、インシデントや不適合が発生した場合にどのような対応をすべきかが規定されています。この項目は大きく分けて、a)の「インシデントや不適合への対処」を要求した部分と、b)以降の「是正処置」について要求した部分に分けられます。
a)で要求されている「インシデントや不適合への対処」はいわゆる「修正」であり、例えば発生したインシデント(事故やヒヤリハット等)や不適合(手順の不順守、法的要求事項の不順守、内部監査での不適合等)に対して、不順守の状態を直したり(修正)、事故やヒヤリハットの結果に対応したりすることが求められています。つまりここで求められているのは「応急処置」ということになります。
是正処置をどのようなプロセスで進めるか
これに対して、b)以降では、発生したインシデントや不適合に対して必要な再発防止のための処置(是正処置)をとることが要求されています。「是正処置」はISO45001:2018では以下のように定義されています。
「不適合又はインシデントの原因を除去し、再発を防止するための処置」(3.36)
是正処置を進めるプロセスには、以下の要素が含まれます。
- 以下を通じて是正処置の必要性を評価する
- インシデントを調査し、不適合をレビューする(何が起こったのか?)
- インシデントや不適合の原因を究明する(なぜ起こったのか?)
- 類似のインシデントの発生や不適合の存在、それらの発生の可能性を明確にする(他に同じようなことはないか? 同じようなことが発生する可能性はないか?)
- 必要に応じて、労働安全衛生リスク・その他のリスクの既存の評価をレビューする
- 是正処置を含む必要な処置を決定し、実施する(管理策の優先順位(8.1.2)と変更の管理(8.1.3)に従って)
- 処置の実施前に、新しい又は変化した危険源に関する労働安全衛生リスクを評価する
- 処置の有効性をレビューする
- 必要な場合、労働安全衛生マネジメントシステムを変更する
また、労働安全衛生マネジメントシステムに特有のこととして、特に以下に注意が必要です。
- 是正処置の必要性の評価には、働く人を参加させ、その他の利害関係者を関与させる(b)
- 処置の実施前に、関連する危険源に関する労働安全衛生リスクを評価する(e)
前者は働く人やその他の利害関係者を是正処置の必要性評価に関わらせることで、本来必要な是正処置が行われなくなってしまうことを防ぐことを意図しています。また後者は、是正処置によって決められたことが、かえって思わぬ新たなリスクを生んでしまうことのないようにすることを意図しています。
(次回に続く)