【ISO14001】9.3 マネジメントレビュー(1)
環境マネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性をレビューしよう
この項目の要求事項を一言で言うと、「環境マネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性を保つために、計画的にトップは環境マネジメントシステムをレビューしなさい」ということです。
マネジメントレビューの目的
まず、この項目の冒頭では、マネジメントレビューの目的が示され、そしてマネジメントレビューを計画的に実施することが要求されています。マネジメントレビューの目的としては、以下が挙げられています。
- 環境マネジメントシステムが継続して適切、妥当、有効であるようにする
それでは、「適切」「妥当」「有効」とはどのようなことを意味しているのでしょうか。これらの言葉の意味を辞書やISO45001の定義で見てみると以下のようになっています。
- 「適切な(suitable)」:「特定の目的や場面に対して適正、適切である」(Oxford Advanced Lerner’s Dictionary)
- 「妥当な(adequate)」:「特定の目的や必要に対して、量において十分である、又は質において十分に良い」(Oxford Advanced Lerner’s Dictionary)
- 「有効(effectiveness)」:「計画した活動を実行し、計画した結果を達成した程度」(ISO14001:2015, 3.4.6)
マネジメントレビューを効果的に行うためには?
ここから分かるように、マネジメントレビューは、様々なデータや情報に基づき(インプット)、現在の環境マネジメントシステムが組織にとって適切か、妥当(十分)か、ということを判断し、必要な変更や改善を決定する(アウトプット)ことを意図しています。その意味で、マネジメントレビューは環境マネジメントシステムの有効な運用と改善にとって非常に重要な役割を担っています。
しかしながら、一方で、多くの組織でマネジメントレビューがISOのための非常に形式的な活動になってしまっているのも事実です。ここで注意すべきなのは、この項目で求めているのは、「マネジメントレビュー」という会議を行うことではなく、経営トップに環境マネジメントシステムの状況に関して必要な事項が報告され、それに基づいて経営トップが適切な意思決定を行う「プロセス」を実行することです。
経営トップが様々な情報を元に意思決定するプロセスは、それがどれだけ意識的・体系的に実施されているかの程度の差こそあれ、ほとんどの組織で既に行われているはずです(そうでなければ今まで組織を運営してくることはできなかったでしょう)。従って、ここではそのような既にある仕組み(様々な会議体や報告・指示体系)を最大限に活用することが、マネジメントレビューを形骸化させず有効に行うための鍵となります(このように、組織の実際のプロセスで要求事項に対応することが、5.1で言われている「事業プロセスへの統合」です)。その上で、そのような既にある仕組みが、規格の要求事項に照らして必要な事項をカバーしているかを検討し、必要な改善を行えば良いでしょう。
マネジメントレビューはどのくらいの頻度で行うべきか?
マネジメントレビューをどのような頻度で行うかも、それを有効に行うための重要な要素です。ここでは「計画された間隔で(at planned intervals)」マネジメントレビューを実施することを要求しているのみで、その頻度を具体的に規定していないため、それは組織が決定することになりますが、この項目の中ほどで挙げられているインプット事項をレビューする頻度は必ずしもそれぞれ同じではないでしょう。
例えば、監視及び測定の結果や不適合の状況、目標の達成状況等は毎月監視したいと考えるかもしれませんし、監査結果は監査を行う頻度によってレビューの頻度は変わります(多くの組織では年1回や2回、ということが多いでしょう)。また、外部・内部の課題の変化は年1~2回レビューすれば良いと考えるかもしれません。重要なことは、それぞれの項目に適切な頻度があり、それがインプットされるタイミングが遅すぎて経営トップが適切な意思決定を行うことができないということがないようにしなければならないということです。
従って、年1回、決まりきった報告を受けて、「決定・指示事項は特にない」ことを記録して終わっているケースが見られますが、そのような組織はそれが自分たちにとって適切な頻度であるかを再検討しても良いでしょう。
(次回に続く)